中国新聞


川崎病
主に乳幼児の患者増加
5日以内に発見・対応


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広島市民病院小児 循環器科主任部長
鎌田政博さん

 川崎病にかかる乳幼児が増えている。年間6000人程度だった新規患者数は2005、06年、1万人を超えた。原因不明で予防法が確立しておらず、心臓に後遺症を残さないには早期発見がカギ。広島市民病院(広島市中区)の鎌田政博・小児循環器科主任部長(52)に注意点を聞いた。(上杉智己)

 ―どんな病気ですか。

 全身の血管に炎症が起こる熱性疾患。主に四歳以下の乳幼児に発生し、一歳前後が最も多い。地名の川崎市や公害病とは関係なく、一九六七年に報告した川崎富作医師の名前が由来になっている。

 ―何が危険ですか。

 患者の約5%に冠動脈瘤(りゅう)(心臓の冠動脈にこぶができる病気)が合併し、その一部は心筋梗塞(こうそく)を引き起こす。このほか心筋炎を合併する場合もあり、こちらも生命にかかわる。全体の致死率は0・1%未満。冠動脈瘤に変化が出始めるのは川崎病発症後六―七日目ごろ。その前の五日目までに川崎病を見つけて早く治療を受けるのが大事だ。

 ―どんな症状に気をつければいいですか。

 診断基準には六つの症状が示されている。
 (1)発熱=三八度以上の高熱が多い。
 (2)目の充血=白目が赤くなる。目やにはあまり出ない。
 (3)唇や舌の発赤=炎症による充血で紅潮する。舌はぶつぶつを伴う「イチゴ舌」に。
 (4)不定形発疹(ほっしん)=場所や範囲に関係なく、いろいろな発疹が出る。
 (5)手足の腫れ、赤み=手足がぱんぱんにむくみ、張りつめた皮膚がてかてかする。指先は発赤し、熱が下がるころに薄皮がむける。
 (6)首のリンパ節が腫れて痛む。

 六項目のうち五つ当てはまるか、四つに加え心臓の合併症があれば川崎病と診断される。はっきりしないケースもあり、該当が二つや三つでも積極的に小児科医を受診した方がよい。疑いがあれば超音波検査で心臓をチェックする。

 ―ほかに早く気付くためのポイントは。

 赤ちゃんの場合、BCG予防接種のあとが赤く腫れるケースもある。発症が目立つ一歳前後でなくても、発熱や発疹が起きたら要注意。目・口は赤くないか、手足は腫れていないかを確認し、早期発見につなげてほしい。

 ―治療は。

 ガンマ・グロブリンと呼ばれる血液製剤を点滴で大量に投与する。最近では体重一キロ当たり千―二千ミリグラムを半日から一日で投与する方法が標準だ。血液中に多く含まれる炎症性サイトカンという化学物質を中和し、症状が改善するとも考えられている。一九八〇年代から使われ始め、致死率や後遺症出現率は劇的に下がってきた。ただし一部の患者には効きにくく、治療上の課題になっている。

 炎症を抑えるアスピリンも併用し内服する。入院期間は十―十五日ほど。退院後、冠動脈障害の程度により、体育やクラブ活動を制限する場合がある。再発例は約3%で、一年以内が多い。再発時は致死率が三倍に高まるともされ、重症化の傾向がある。

 ―成長後も含め、病後の注意は。

 冠動脈のこぶが大きければ、将来的に冠動脈の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)を招く危険が高くなる。心筋梗塞を防ぐため、アスピリンなど血栓予防の薬を内服する。日常生活ではメタボリックシンドロームや生活習慣病の予防と同じように、普段からバランスのとれた食事、適度な運動、禁煙を心掛けたい。

(2008.10.22)


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