中国新聞


障害者育てる母の奮闘記
広島県内の8人、本を刊行
支援のあり方訴え


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本の完成を喜び、子育ての日々を振り返る母親や子どもたち

 障害のある子を育てる広島県内の母親八人の手記が、一冊の本にまとまった。「8人の子育てからみえてくる支援」。どこで学ぶか、どこで働くか。不安や困難に、一つ一つ向き合ってきた子育ての記録。個々に応じた支援がいかに大切か―。体験を通じて訴えかける。

 子どもたちは今、十八歳から四十四歳。障害もダウン症、自閉症、学習障害、単一の知的障害などさまざまだ。子育ての時期も違う、障害の特性も違う。でも母親たちはみんな奔走してきた。それは、わが子に合った保育・療育の場を探すため。就学、就職先を探すためだ。

 養護学校高等部の設立運動、地域での作業所づくり運動、子育て支援の拠点づくり運動…。手記には、保護者が障害児の社会資源づくりを引っ張ってきた姿が見える。一朝一夕では成し得ない、小さな一歩の積み重ねが今の教育や福祉の基盤であることが分かる。

 手記本の編者は、県立広島大保健福祉学部の金子努教授と、広島市立広島特別支援学校の草羽俊之教諭。副題は「特別支援教育と障害者自立支援法に問いかける」とした。

 近年、障害児者の教育や暮らしを支える制度の大きな転換が続く。理念は高いが、教員配置などの環境整備が不十分と指摘されている特別支援教育。サービス利用料の一割負担を課した障害者自立支援法―。これらの制度改革は、母親たちの努力に報いているか。願いに寄り添っているか。本の後半では、制度の問題点や課題をまとめた。

 草羽教諭は「母親たちの子育て奮闘記。必要な支援のあり方を学び取り、今後の特別支援教育と福祉に生かしていかなければならない」と話している。出版会社は久美(京都市)、百九十七ページ、二千百円。書店やインターネットで注文できる。(木ノ元陽子)

(2008.8.14)


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