中国新聞


地元意見聞かず なぜ
2高の募集停止決定 広島県教委が高宮・自彊


photo
県教委に抗議の申し入れをする自彊高の江草同窓会長(中央)ら

 広島県教委は十一日の教育委員会議で、高宮高(安芸高田市)と自彊高(福山市)の県立二高校の生徒募集を二〇〇九年度から停止することを決めた。現在の一年生が卒業する一一年三月末で廃校となる。

 県教委によると、高宮高は一学年一学級の全日制普通科。各学年四十人の定員に対し在校生は一年三十二人、二年十七人、三年四人の計五十三人。自彊高は一学年二学級の全日制普通科で、一、二年は各八十人、三年は百二十人の定員に対し、在校生は一年七十八人、二年五十二人、三年五十四人の計百八十四人だった。榎田好一教育長は生徒募集停止について「今後、入学者数の大幅な増加は見込めない。教育効果を高める適正規模を確保するため」としている。

 高宮高は一九四八年に設置された吉田高の川根、船佐、来原の三分校が前身。統合を経て八三年の本校化により高宮高となったが、初年度から入学定員割れが続いていた。

 自彊高は、四八年に設置された神辺高の広瀬、山野の二分校が前身。その後統合し、七二年に自彊高となった。生徒数はピーク時の八百八十八人から減少。〇三年度以降は入学定員割れが続いていた。

 県教委は〇二年三月に県立高の再編整備基本計画を策定し、一学年三学級以下の小規模校の統廃合を検討する方針を決定した。今年六月には計画の一部を改訂し、〇八年度までだった計画期間を一三年度まで延長することを決めていた。(永山啓一)

 保護者反発 1万人署名

 自彊、高宮の県立二高校について、来年度からの生徒募集停止が決まった十一日、保護者や地域などからは不満の声が上がった。「地元の意見も聞かないやり方はおかしい」。県立高の再編整備基本計画に沿って小規模校の統廃合を検討する県教委に対し反発が広がった。

 自彊高の同窓会やPTA役員ら十一人は、計画撤回を求める要望書を、約一万二千四百三人の署名を添えて県教委に提出した。署名活動の期間は、九日からのわずか一日半。江草信行同窓会長(49)は「卒業生や保護者だけでなく、卒業生の職場や地域の人も協力してくれた。署名の重みを感じてほしい」と涙をにじませた。

 PTAの高橋政明会長(49)は一週間前に募集停止方針を校長から聞いたという。「保護者や地域の意見も聞かずに決定するやり方はおかしい」と不信感をあらわにする。

 十二日に広島市民球場(広島市中区)で開幕する全国高校野球選手権広島大会では、自彊高の竹本充主将が選手宣誓をする。「子どもたちがかわいそうでしょうがない」と野球部保護者会の竹本克典会長(48)は生徒の気持ちをおもんぱかった。

 生徒募集停止は、自彊高のある福山市加茂町下加茂地区の住民にも伝わった。加茂学区自治連合会の三好良治会長(68)は「最近は地元から行く子どもが少なくなっているとは聞いていたが…。残念です」と肩を落とした。

 「ついに来たか」。高宮高の地元では、入学者数の減少で募集停止は毎年話題に上っただけに、そうした声も聞かれた。

 伊藤寿和校長(58)は「生徒不足が部活の休廃部を招き、魅力を失う悪循環だった」と語る。高齢者との運動会「孫と一緒に走ろう会」など地元交流にも力を入れたが、保護者や生徒のニーズはつかめなかった。

 「生徒は少なかったが地域に活気をもたらしてくれたのは事実。お年寄りとの交流が絶たれることも残念」。高宮中PTA会長の八島芳樹さん(46)は落胆していた。

 県教委は今後も小規模校の統廃合を検討する方針。県高教組の有田耕執行委員長は「どの地域の県民にも同じサービスを提供するという観点から、少人数でも存続するべきだ。とりわけ地元との話し合いなしに決めるやり方は許せない」と批判している。

(2008.7.12)


子育てのページTOPへ