学生や元技術者、小学校へ 中国地方 配置増える
小学校の理科室に、頼もしいサポーターが現れた。文部科学省が導入して二年目に入った「理科支援員」である。理系の大学生、退職した元教員や元技術者…。子どもの「理科離れ」が指摘される中、さまざまな経歴を持つ支援員に授業のてこ入れを期待する声が高まる。中国地方でも少しずつ配置校が増えている。(松本大典) 福山市神辺町の竹尋小の理科室。五年二組の授業で、黒板脇のモニターにウニとクラゲの卵や幼生の画像が映し出された。 実験・観察を補助 この日の単元は「生命の誕生」。教科書にはウニもクラゲも登場しない。福山大大学院で生命工学を専攻し、ナマコなど海の生き物を研究する理科支援員の過田愛子さん(22)が「違いが分かりやすい」と教材に選んだ。 「さあ、比べてみよう」。担任の松岡智浩教諭(47)の合図でグループ学習に入ると、過田さんは室内を巡り始めた。「どう思う?」「色もよく見て」―。うつむき気味の子に優しくささやく。 理科支援員は、学校の希望に応じて五、六年を対象に配置される。実験や観察の手伝い、準備、片付けのほか、授業づくりや教材開発も支える。過田さんのような理系の人材を活用することで、「理科離れ」に歯止めをかけたいとの狙いがある。 全国約三千五百校を対象とした国立教育政策研究所(東京)の二〇〇三年度調査。理科を「好き」「どちらかと言えば好き」と答えた児童の割合は、小五(74・2%)と小六(64・1%)で10・1ポイントの開きがある。落ち込み幅は、小六から中一の2・8ポイント、中一から中二の2・6ポイントなど他学年間と比べても大きさが目立つ。 さらに、独立行政法人科学技術振興機構(本部・埼玉県川口市)が〇五年度、モデル指定した全国百八十二校に実施した調査では、小学校教員の61・9%が「理科の授業が苦手」と回答。ネックには「実験・観察の準備、片付け」(66・0%)「教材作成の工夫」(55・1%)「実験の失敗」(51・2%)などが挙がる。 「質問しやすい」 背景には、授業時間数の削減がある。学習指導要領で定める小学校の理科の時間は、詰め込み教育批判などの影響で、一九七七年の改定以後、減り続けた。六年間のトータルでは、三十年前の六百二十八時間に対し、現在は三百五十時間。図工や音楽(各三百五十八時間)より少ない。 「ゆとり教育」の流れをかえる二〇一一年度からの新学習指導要領では、理科の授業は五十五時間増の四百五時間となる。教室に投入される理科支援員は、新要領の柱となる「理数教育の充実」の切り札だ。 広島県教委は本年度、公立小全四百八校のうち三十五校(前年度比二十三校増)に理科支援員を配置。広島市教委も全百四十校のうち二十四校(同七校増)に送り込む。 中国地方の他県教委では山口が七十九校(同二十二校増)、島根が五十一校(同二十四校増)に置いた。岡山は配置する学級数の目標として前年度実績比七十三増の百八十を掲げ、配置を進めている。人材確保の課題などを踏まえて様子を見ている鳥取県教委も「好評ぶりは耳にしている」と関心を寄せ始めた。 竹尋小の松岡教諭は「平たんだった授業に変化が出た」と喜ぶ。約二十人の教職員は「おそらく、みんな文系の学部卒」。実験に失敗しても「うまくいけばこうなると、教科書でさらうのがオチだった」という。理科の得意な「パートナー」ができた昨年度からは、「納得いくまで繰り返す時間と気持ちのゆとりができた」。 ウニとクラゲの授業が終わった理科室。山本和季君(10)が「若い先生が来て、質問しやすくなった」と声を弾ませた。「子どもたちの質問が楽しみ」と過田さん。疑問と納得を繰り返すうちに「理科漬け」になった中学時代を振り返り、その起点に思いをはせた。「当時の理科の先生が、すごく面白かったんです」
(2008.6.30)
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