「公立」国や県が対策本腰 「私立」少子化で財政悪化 中国・四川大地震により学校施設の耐震強度があらためてクローズアップされる中、広島県内の私立学校の耐震性の確保や診断の遅れが懸念され始めた。公立小中学校の耐震化には国が補助拡大を検討するなど本腰を入れ始めたが、私立学校は実質、運営母体の学校法人任せとなっている。 県学事課によると、二〇〇七年四月現在、県内の私立小中高校全七十六校の校舎、体育館など二百八十三棟のうち、耐震性が確認できているのは百四十六棟。耐震化率51・6%は四十七都道府県で四十一番目に低い。 私立幼稚園二百十二園では、二百六十八棟のうち耐震性が確認されたのは百三十四棟。50・0%の耐震化率は三十八番目の低さだった。 公立学校の耐震化率も〇七年四月時点で小中学校44・8%、高校47・6%だが、県は〇七年三月策定の耐震改修促進計画で学校など公共施設の耐震化率を一五年度末までに90%以上とする目標を設定。計画的に耐震化を進める方針で、新耐震設計基準以前の建物が対象となる耐震診断の実施率は、既にほぼ100%に達しているという。 これに対し、私立小中高校の耐震診断の実施率は〇七年四月時点で19・0%と低迷。国が診断や補強費用の三分の一を負担する制度もあるが、県私立中学高校協会は「少子化に伴う生徒の減少などで経営が厳しい学校もある。数千万から数億円が必要な補強や改築が計画的にできないケースが多い」という。 県も独自に、私立校が耐震工事の資金を金融機関から借りる際、利子の1%を補助する制度を〇五年度に設けているが、利用実績はない。 〇七年度、県内の高校生で私立高校に通う生徒は全体の三割にあたる二万四千六百四十二人。小中学校と幼稚園を加えた私立校・園の子どもの数は約六万五千人になる。 県学事課は「子どもの安全のため、耐震化は公立と同様に私立への配慮も必要。財政負担との兼ね合いもあり大きな課題と認識している」としている。 私立校の耐震化率が全国最下位となっている山口県は本年度から診断費用の国の補助に加え、県独自に三分の一を補助する制度を始めている。(永山啓一)
(2008.6.7)
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