集約化進む学校給食調理場 東広島市 ▽細る農業を「買い支え」 東広島市が学校給食調理場の集約化を進めている。中四国最大規模の東広島給食センターを今年9月に稼働させ、2009年度中に自校調理場はすべて閉鎖する。給食は子どもに、食と農の結びつきを伝える教材でもあるだけに、市は集約化を給食の地産地消に本腰を入れる好機ととらえるべきだ。食材を地元調達すれば、細る農業を「買い支える」こともできる。 「いただきまーす」。東志和小(六十七人)に児童の元気な声が響く。ご飯は、校内調理場で炊きたて。秋には授業の一環で収穫したコメを炊く。地域と学校を結び、食育も担ってきた調理場はこの夏、姿を消す。 市内で給食を実施しているのは計五十の小中学校。うち二十六校分を調理する六つのセンターは存続する。残る二十四校の自校調理場は九月の東広島給食センター(同市田口)稼働に伴い、段階的に閉鎖される。 ▽経営を合理化」 一万二千食を賄う東広島センターの総事業費は約二十四億円。市教委は「国の衛生基準に合わせ、経営合理化もできる」と説明する。 文部科学省によると〇六年度、全国では自校式などの「単独調理場」が43・8%、センター式などの「共同調理場」が54・6%、「その他」が1・6%。自校式のメリットは一般的に、食中毒の被害拡大が防げる▽災害時に市民の炊き出し場となる―などといわれる。 こうした中で、「給食を農業振興に役立てるべきだ」と呼び掛けるのは、長崎大の中村修准教授。校区内で食材を賄う「地場産自給率」を国内で初めて提唱した。 全国の給食マーケットは年間約一兆円とされる。東広島市も生徒数や給食費から単純計算すると六億円近い。中村准教授は「新規就農者を支援し、農産物を優先購入したらどうか」と提案する。 市内の既存六センターでは現在、ニンジンやキャベツなど野菜十品目の地場産自給率は8%。市産業部は「生産量から試算すると28%が可能」とし、地元農協などと食材調達の新たな仕組みづくりを検討している。 県内有数の産地であるコメはどうか―。六センターは炊飯器を備えておらず、市は県学校給食会と調達契約。東広島、三次、三原市産のブレンド米を遠く離れた広島市内で炊き、毎朝トラックで運ぶ。市は給食会に、東広島市内産100%にするよう要望している。 ▽食糧安保にも」 食材の地元調達を機に学校と地域が親交を深めた事例が県内にある。三次市の十日市共同調理場では、自治会メンバーの農家がタマネギやキュウリなどをほぼ毎朝納入。新鮮野菜は児童に好評で、食べ残しが少なくなったという。農家も「子どもの喜ぶ姿が励みになる」と歓迎する。 39%まで低下した日本の食料自給率。中国製冷凍ギョーザ事件や外国の穀物高騰などを受け、基本食料は国内で一定程度確保する「食糧安全保障」を重視する考えが広がっている。豊かな農地が広がる東広島。給食の地産地消は農業を持続させ、将来的には市民全体の「食糧安保」にもつながるはずだ。(下久保聖司) (2008.5.15)
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