広島市立袋町小にみる教科担任制 一人の学級担任がほとんどの教科を教える小学校において、広島市中区の市立袋町小(宮原真治校長、二百四十七人)は、教科ごとに先生が代わる「教科担任制」を独自に三―六年生の授業に採用している。二〇〇二年度の導入から六年。「先生たちに自信がみられる」「子どもの学習意欲が上がった」などと保護者らの評判も上々だ。教員定数に制約がある中、工夫しながら取り組む袋町小の試みを探った。(見田崇志) ▽教員定数制約 他校への広がり難しく 四月二十二日の放課後、図書室であった教員の担任者会議。時間割担当の森貞小百合教諭(44)は、五年生の算数や社会などを受け持つ教員が二十六日からの週に出張することを告げ「空いた時間に皆さんが担当する授業を入れましょう」と呼び掛けた。 毎週火曜日に開く会議では、各教員の予定を調整し来週の時間割を作成する。この日も別教科で穴埋めすることを確認した。 原則として時間数の多い国語と社会を除き、三―六年の計五クラスで行う算数、理科、図工など七教科の授業を七人の教諭で受け持っている。 複数でチェック 七人はそれぞれ得意教科を担当。各分野の指導研究に専念でき、授業の質を高めることができる。複数教諭の視点で各クラスや児童の動向もチェックでき、児童の変化の早期発見にもつながるという。 理科を担当する西井章司教諭(46)は四月中旬、教室で涙ぐんでいる女子を見つけた。授業後、直前の図工の教諭に連絡。クラスメートとのけんかと分かり、その日のうちに仲直りさせた。 「一日通して子どもをみることができないので、ちょっとした子どもの変化を見逃さないようにしている」と西井教諭。授業の合間や放課後にも積極的に情報交換するなど、教員同士の緊密な連携が重要という。 一方、学級担任制より、教員が児童一人一人と接する時間は少なくなる。五分間しかない休憩時間も次の授業の準備で慌ただしい。音楽など特別教室を使う際には、児童を整列させて移動するなど工夫している。 費用面がネック 袋町小は〇二年度、当時の校長の発案で校舎の新築を機に教科担任制を導入した。当時は一部児童が授業中に立ち歩くなど授業が成立しづらい状況があった。担任一人に問題を抱え込まさず、教員全員での対応に取り組み、児童も落ち着きを取り戻したという。 保護者や児童の評価も高い。アンケートでは、保護者、児童ともに九割以上が教科担任制の授業について「よい」「続けてほしい」と回答している。不登校の児童もいないという。 ただ、義務教育標準法で定める教員定数を一校当たりの割合でみると、公立小は教科担任制をとる公立中より少ない。教科担任制の導入は、教員の加配など費用面から広がらないのが実情だ。広島市内では、広島大の付属小や、私立の安田小(中区)、なぎさ公園小(佐伯区)などで実施しているものの、公立は袋町だけだ。 広島市教委は、一〇年度の導入を目指す「ひろしま型カリキュラム」に小学校高学年での教科担任制の検討を盛り込んでいるが、「各校の実情に任している」との姿勢だ。宮原校長は「教員同士だけでなく、児童との距離も縮まったと実感する。小さな学校の特徴を生かせる試みだ」としている。
(2008.5.5)
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