英語教育で大臣表彰 加計高芸北分校
広島県北広島町の県立加計高芸北分校(小田均分校長、七十七人)が三月、英語教育の優良校として文部科学大臣表彰を受けた。分校の受賞は全国で初めて。七年前から地元の芸北中と取り組む連携型の中高一貫教育の成果が評価された。存廃の危機に悩む西中国山地の小さな分校の試みを探った。(見田崇志) ▽芸北中教諭と相互乗り入れ 細かく指導 意欲育てる 十五日午前、芸北分校の加藤賢一教諭(33)は約百メートル離れた芸北中の教室に向かった。両校を兼務する英語教諭として週四時間、中学の授業に入る。この日は三年の英語応用クラスで、十三人の生徒と向き合った。 考えさせる授業 The room is cleaned―。加藤教諭はいきなり黒板に英語の例文を書く。「部屋を掃除する」と訳した男子生徒に、「主語は何だろう」と問う。生徒は少し考え、「掃除される部屋が主語になるのか」と気付いた。 この日のテーマは受動態の文章。授業の最後に「する」と「される」の文法の違いを解説した。 「考えるプロセスを生徒に体得してもらうのが狙い。多くの生徒が相手だと、ここまでできないんですが」と加藤教諭。三年生は全員で二十三人。十人の標準クラスと分けた少人数・習熟度別授業の効果を実感している。 二〇〇一年度に導入した連携型の中高一貫教育で、両校教諭の相互乗り入れが英語と数学の二教科で始まった。英語では中高の教諭各一人が乗り入れ授業を受け持ち、一緒に時間割やスケジュール、指導方法に知恵を絞る。 つまずきを把握 生徒がどの段階、時期でつまずいたのか把握できる。分校に進んだ生徒も中学の教諭がフォローし、長期的な視点で指導できるようになった。 加藤教諭の指導を受け、分校に進んだ二年の森前大輔君(16)は「中三になって成績もぐんと上がった。面白くなった英語の力を分校で伸ばしたかった」と振り返る。 芸北中との一貫教育は、意欲ある生徒の学力アップにつながり、今回の表彰でも高く評価された。同時に、生徒数の減少で存廃の危機にさらされる分校に活路を与える。 一九九〇年代、芸北中から分校に進む生徒は二―四割だった。一貫教育を始めた〇一年度以降、六―八割に増えた。「学びの場としての力が定着し、地域に浸透した成果」。今春まで分校長を務めた安原敏光・県教委指導三課長代理も胸を張る。 今春の卒業生二十九人のうち、国公立大に進学したのは五人。一九四八年の開校以来、最多になった。
(2008.4.21)
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