ネット被害に向き合う現場
パソコンや携帯電話の普及で、子どもたちを取り巻く情報環境が一変している。インターネットを通じたトラブルや事件に加え、メールや掲示板を使ったいじめも横行する。ネット社会の弊害にどう対応すればいいのか―。戸惑う学校現場の声に応え、広島県教委や広島市は対策に乗り出している。(見田崇志) 「学校で嫌いな人ランキング」。昨年十一月、一通のメールが広島市内の女子中学生(14)の携帯電話に届いた。記されたアドレスに接続すると、友人や教員らの実名が載ったサイトが表れた。「キモイ(気持ち悪い)」「ウザイ」「そうだよね」との書き込みが続いていた。 ▽実名挙げ中傷 「学校裏サイト」と呼ばれるネット上の掲示板。女子生徒はすぐに、掲示板の管理人に削除を要請した。 学校裏サイトは、中高生らが情報交換の場として開設している。携帯電話用が大半で四、五年前から広がった。同級生の実名を挙げた悪口、中傷が書き込まれることも少なくない。ネットいじめの温床といわれ、被害も増えている。 南区の宇品中でも昨年、ネットへの書き込みをめぐるトラブルが数回発覚した。その都度、当事者である生徒と保護者を交えた話し合いを重ねた。問題を学校ぐるみで共有するための全校集会も開いた。 「生徒同士のトラブルは学校の問題。ただ、表面化しにくいネット上の出来事だけに対処が難しい」と立畑薫校長(54)。今月中旬には、一、二年生を対象に広島県警のサイバー犯罪対策室による講演会も開催。軽い気持ちの書き込みが犯罪につながる実例を教え、生徒の意識改革を促している。 市教委によると、ネットにかかわる問題行動報告は二〇〇六年度以降、市立小中から三十六件に上る。増え続けるネットトラブルに「何をどう教えればいいのか」「適切な教材が分からない」と戸惑う学校や教師も多い。 こうした中、行政も手をこまねいているわけではない。県教委は昨年十月、携帯電話のトラブル対処法などをまとめた指導マニュアルを作成し、県内の公立学校に配布。今年一月には、市町教委の担当者向けに、子どもに正しい知識と接し方を教える情報モラル教育の研修会を開いた。 ▽全国初の罰則 市は七月から、子どもが使う携帯電話やパソコンに、有害サイトへの接続を制限するフィルタリング機能の付加を民間業者に義務付ける条例を施行する。違反事業者を公表する罰則は全国初。今月の市議会定例会で条例案が可決された。 便利さと危うさを併せ持つネット社会。学びの現場もやっと向き合い始めた。
(2008.3.31)
|