中国新聞


退職教員 現場に派遣
校舎新増築へ動く
東広島市08年度予算案 教育充実


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校舎が増築される寺西小。現在は仮設教室(手前)を使って児童の増加に対応している

 広島県のリーディングエリアから日本のフロントランナーへ―。東広島市教委が新年度に掲げたスローガンである。幅広い新規事業に取り組む木村清教育長は「子どもの勉強や部活動、教員の指導力の面で、先頭に立って走りたい」と教育力の向上に自信を見せる。

 新規事業の一つが「学校の元気応援事業」。経験豊富な元教員らを学校現場に送り込み、活力を与えるのが狙いだ。退職教員ら三十七人を非常勤講師として小中学校に配置し、生徒指導や発達障害の児童、生徒の教育支援を担う。さらに、優れた指導力を持つ退職教員ら五人を学校に派遣し、授業や教材づくりをしてもらうなど、現場強化の施策を打ち出した。

子ども増が背景に

 市が教育の充実に力を入れるのは、好調な企業立地などを受け、西条地区を中心に子どもの数が増えている背景がある。二〇〇五年の国勢調査で市内の人口に占める十五歳未満の割合は15%と県内の市で最も高く、教育施策へのニーズは強い。保護者から学校に対する多様な要望で、多忙を極めている学校現場の負担の解消も目指している。

 子どもの急増は市に活力を生む一方、学校現場は仮設教室による対応を強いられ、保護者らの不満も強かった。しかし、蔵田義雄市長は「仮設校舎の解消」を公約にうたっており、新年度から校舎の新増築に踏み切る。生徒の増加が続く西条中は西条第二中(仮称)を分離新設し、新年度は三千七百万円をかけて基本設計などを実施。一一年四月の開校を目指す。

 さらに、仮設教室で対応してきた寺西小と三永小は、敷地内に校舎を増築する。新年度に二千四百万円をかけて設計に着手。一〇年四月の利用開始を予定している。寺西小PTA会長の蔵田史子さん(47)は「全校児童が同じ環境で勉強するのが望ましく、増築は当然。校舎は子どもが過ごしやすいようにしてほしい」と願う。仮設教室を使っている他の五校についても、市教委は児童や生徒数の推移を見ながら増築を検討するという。

周辺部対策が課題

 教育の充実は一面で、市中心部の「過密」対策に連動した意味合いを持つ。一方で、合併町を中心に子どもの数が減っている周辺部の「過疎」対策は、今後の課題として残っている。

 小中学校の配置の在り方を検討してきた市学校適正配置検討委員会は昨年春、児童数の少ない小学校十八校を将来的に七校に統合する再編案をまとめた。市教委総務課は「統合については地元と十分話し合い、理解を求めながら進めたい」としている。

 対象地域では「学校がなくなると、地域が寂れる」と不安の声もある。市教委は、市中心部と周辺部のバランスを考慮して全体計画を進めてほしい。「日本のフロントランナー」のスローガンを掲げる以上、地域による教育格差を生じさせてはならない。(治徳貴子)

(2008.2.23)


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