中国新聞


代理出産で素案 国民的な議論深めよう


【社説】 夫婦が妻以外の女性に子どもを産んでもらう代理出産を認めるべきか否か。日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」は、代理出産を新法によって原則禁止すべきだとする報告書の素案をまとめた。

 ただ、あくまでも議論のたたき台の案であり、罰則のある法規制には、委員の中でも反対意見がある。報告書としての結論は三月まで持ち越した形だ。国民の中でも、さまざまな見方があるだけに慎重な議論が欠かせない。

 原則禁止としたのはなぜか。素案は、代理出産の中でも、夫婦の精子と卵子を使ったケースに絞ったうえで問題点を挙げている。

 まず、代理出産を認めた場合、代理母や生まれてくる子どもに、どのような身体的、精神的な負担が生じるか。

 妊娠中の異常の確率が高くならないか▽親子や姉妹の間で強要されないか▽代理母と早期に引き離される子どもへの影響はないか―などを懸念材料として示した。

 規制の手だてとしては、医療者の判断に委ねる段階を超えているとし、法整備が必要としている。その一方で、処罰の対象となるのは営利目的などに限定。国の監視下で条件を設け、例外的に代理出産を認めることも、今後の検討課題とした。

 病気で子宮を失うなど、代理出産でしか血縁のある子どもを持てない女性もいる。人道的な配慮が必要なのではないかという意見に配慮し、限定的に将来認める可能性も残したといえそうだ。

 代理出産をめぐっては、二〇〇三年に厚生労働省の部会が罰則付きで禁止すべきだとの報告書を作成している。産科学会も禁止するガイドラインを示しているが、法的な拘束力はない。

 一方で、生殖技術の発達によって、娘の代わりに五十代後半の女性が「孫」を産んだり、海外に渡って代理出産してもらったりする例もある。

 こうした現実にどう応えていくか。国の依頼を受け、学術会議の検討委では一昨年から、当事者や代理出産に携わった医師らの意見も聴き、論議を進めてきた。個々の指摘に目新しさはないものの、論点を整理して一つの方向性を打ち出した意義は大きい。

 今月末には、一般向けの公開講演会も予定されている。どうルールづくりをしていくか。世論の動向や国民感情を踏まえながら着地点を探りたい。

(2008.1.20)


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