里帰り分娩 対応中止 来月から 産科集約控え急増
呉圏域の産科医療集約化決定を受け、四月から集約先の一つとなる呉市の国立病院機構呉医療センターは、転院を伴う分娩(ぶんべん)が急増したため、実家がある呉市で出産する「里帰り分娩」の受け入れを二月から当面、中止する。病床不足から産後の入院期間を短縮させるなど妊婦への影響も出始めた。 呉医療センターによると、分娩は月約四十―五十件台で推移。それが昨年十一、十二月はともに八十九件、一―三月は月九十件を超える見通し。急増について「他院の分娩制限と、昨年十一月に決定した集約化で出産できる公的病院がなくなる心配から急きょ転院してきたことが原因」(佐治文隆院長)と分析する。 呉医療センターでの二〇〇六年度の分娩のうち「里帰り分娩」は二百四十八件あり、全体の40・3%を占めている。 昨年十一月以降の急増にはこれまでと同じ産婦人科の医師七人で対応しているが、受け入れの医療体制が十分整わないなどの中で、「今の呉市民を優先させる」ために里帰り分娩の当面の中止を決めた。 さらに、産後入院は通常約七日間だが、病床不足のカバーなどのため異常がなければ一―二日短縮するなどの緊急措置を行っている。十一月に出産した市内の三十代女性は「十分な説明もなく小児科病棟に移り、退院が一日早まった」という。 佐治院長は「集約化の決定を受けた転院が多く、里帰り出産を制限する決断をした。ハイリスクの妊婦に加えて、婦人科のがん患者も多い。全力で対応するが医師の疲弊も心配だ」としている。(吉村明、増田咲子)
▽妊婦のケア優先を 集約化早くも影響 四月に始まる呉圏域の産科医療集約化で、妊婦への影響が早くも出始めている。国立病院機構呉医療センター(呉市青山町)は出産が急増したための窮余の策として、里帰り分娩(ぶんべん)を当面中止せざるを得なかった。 呉共済病院(呉市西中央)の産婦人科休診を伴う集約化を不安に思った妊婦の増加や、中国労災病院(呉市広多賀谷)の医師減による分娩受け入れ制限の影響で、呉医療センターの忙しさが極限まで達しているという。 呉医療センターで出産した女性は「スタッフに悩みを相談できないほどの慌ただしさだった」。別の女性は「出産はメンタル面のサポートが大事。親元での出産は精神的な負担が軽減されるのに…」と残念がる。市民の間でも里帰り分娩を望む声は根強い。 集約化は産婦人科医師不足の危機を乗り切り、医療体制の強化を図るための緊急措置。昼夜を問わない勤務医の疲弊を和らげる意味でも集約化の必然性は理解できる。 ただ、新たな対応策を導入するために現場が混乱しては意味がない。心身ともに不安定になりやすい妊婦への目配りこそ最優先されるべきだ。(増田咲子) (2008.1.16)
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