明橋大二さんに聞く 仕事偏重の生活 再考を
「子育てにかかわりたくても、仕事で目いっぱい…」。こんなジレンマを抱いているお父さんに、お薦めの本が出版された。「忙しいパパのための子育てハッピーアドバイス」(1万年堂出版)。著者で精神科医師の明橋大二さん(48)は「子育てはかけがえのない人生勉強です」と言う。広島市を講演で訪れた明橋さんに、世のお父さんへのメッセージを聞いた。 ▽妻任せ 深刻な結果招く お父さんが育児をすると、いろんな「ハッピー」が生まれる、と明橋さん。まずお母さんが楽になる。子どもは父親からも愛されていると自信を持つ。何より夫婦仲がよくなる。それが子どもに安心感を与える―。「そう、いいことずくめ」なのだと。 でも、多くの父親の本音はこうだ。「何を、どうすればいいか分からない」。残業が続き、子どもが寝入ってから帰宅するような日常で、父親として何ができるか。夫として、何ができるか。著書では、一つ一つの「ハウツー」をかみ砕くように説く。 「母親が子どもを虐待するケースの多くは、父親が育児に非協力的。母親は孤立し、自分を責め、やり場のない気持ちを子どもにぶつけてしまう。虐待防止の観点からも、父親が子育てにかかわる必要がある」と強調する。子育てのアドバイス本である一方で、「夫婦の関係を見直すきっかけになれば」と願う。 二〇〇五年から発行している「ハッピーアドバイスシリーズ」の第六弾。「ぜひ、パパ向けにも書いて」という読者からの熱い要望に応えた。「実はね、僕自身への反省も込めて書きました」。意外な言葉が返ってきた。 高校三年と一年の娘がいる。二人が幼かったころ、妻も看護師として働いていた。保育園の送り迎えや食事作りを分担していた時期もある。だが次第に精神科医としての仕事が忙しくなり、子育ては妻任せになってしまったという。 「小学校の運動会に行ったのは一度だけ。ひどいですよねえ」と頭をかく。「当時、妻がなぜカリカリしているのかさっぱり分からなかった。今になって、悪かったなあと思うんです」 今、心の不調を訴える五十代、六十代男性がいかに多いことか―。仕事ひと筋で子育てにかかわらなかった分、家に居場所はない。妻がいきなり家を出たり、子どもと会話がなかったり。「若いお父さんには、そんな結果を招いてほしくない」と語り掛ける。 「大切なのは相手を尊重すること。妻に対しても、子どもに対してもね」。夜、アルバイトを終えた長女を迎えに行くのが明橋さんの日課という。家までの十五分のドライブ。親子の時間が、何よりいとおしい。(木ノ元陽子) (2007.11.19)
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