女性医師を辞めさせない
全国で勤務医不足が深刻化する中、子育て支援を充実させ「女性医師を辞めさせない」手法が注目を浴びる。今年の講演予定は二十回。「保育園を探すのも院長の大事な仕事。特別なことをやっているわけじゃない」。山口市内のホテルで県と県医師会が開いた研修会で講師を務め、病院長らに取り組みを披露した。 「勤務医が辞めるのは労働条件が悪いから。国家試験をみると、毎年二千六百人の女性医師が誕生する。うち二割の五百人は勤務医を辞め、パートや開業医になっていく」。データを基に、若い世代では女性医師が増加傾向にあることや育児休業の取得率が低い現状を指摘。県内でも共通する課題を明らかにした。 二〇〇三年から院長を務める自身の病院では、子育て中の医師や看護師は、週に三十時間ほど働けば正職員で雇用。希望すれば残業も当直もない。「皆がみな利用しては困ると周りは心配したが、平気だった。女性はできれば働きたいと思っている」。該当する六十人の女性医師のうち利用は十人で、ほとんどが一日八時間働くという。 発想の転換を繰り返し促す。女性医師の勤務条件を緩和する場合、男性にしわ寄せがこない手を打つ。産婦人科では、外部医師の当直を増やした。「人件費は年に三千七百万円増。でも、分娩(ぶんべん)件数は増え収益も二億円上がった。何の心配もない」。研修生など契約職員の出産・育児休暇も充実。「若い世代が多く、うやむやにはしない。大事にしたら、ずっと勤めてくれる」と語る。 アイデアは、〇一年まで十三年間勤めた岡山大医学部の小児科医局時代に培った。入局する半分近くが女性だったが、誰も辞めなかった。「ボスがどれだけ戦力として考えるか。どれだけケアするかが肝心」。女性が働き続けるのを阻むのは「男性の無理解」と断言する。 家庭では妻と共働きで保育園探しに困った。約三十年たった今、二人の娘が医師になっても事情は同じ。「自分の両立支援なんです。勤務先でも家庭でも、ちゃんとせんと大変なことになると」 「制度を充実させると、女性だけでなく男性にも人気が出る。お金のことより気持ちよく働きたいんですよ」。もう一度、意識の変革を訴え掛けた。(高橋清子) (2007.10.17)
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