中国新聞


母乳の重要性を再評価
授乳と離乳 厚労省新指針のポイントは?


 「母乳と離乳食の与え方について、国が新しい指針を出したそうですね。これまでとどう変わったんでしょうか」。広島市南区の母親(36)から尋ねられました。厚生労働省が今年三月にまとめた「授乳・離乳の支援ガイド」のことです。母乳育児の支援を初めて具体的に打ち出し、離乳前の果汁の必要性を否定するなど、母乳の重要性を再評価しています。同省などにポイントを聞きました。

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厚生労働省が今年3月にまとめた「授乳・離乳の支援ガイド」

 離乳期 個人差に配慮

 ガイドは、A4判七十九ページ。「授乳編」と「離乳編」から成ります。母子保健課によると「詳しい授乳のガイドを作成したのは初めて」だそうです。

 「授乳編」で示す母乳育児支援を進める五つのポイントはこうです。

 (1)母乳で育てる意義と方法の啓発

 (2)出産後はできるだけ早く、母子が触れ合って母乳を飲めるようにする

 (3)出産後は母親と赤ちゃんが終日、一緒にいられるようにする

 (4)赤ちゃんが欲しがるとき、母親が飲ませたいときにはいつでも母乳を飲ませられるようにする

 (5)困ったときに相談できる場所づくりや仲間づくり

 これまで、国が母乳育児の具体的なマニュアルを提示したことはありませんでした。ところが二〇〇五年の調査でこんなことが分かったのです。妊娠中の母親の96%が「母乳で育てたい」と回答したにもかかわらず、実際に母乳だけで育てている人は四割弱(生後三カ月)にとどまる―。

 実態を踏まえ、授乳の支援策を盛り込んだガイドを、主に医師や看護師、保健師、栄養士、保育士など、子育て支援にかかわる専門家向けに作ったそうです。

 「離乳編」は十二年ぶりの指針改定です。以前の指針は離乳について「初期」「中期」「後期」「完了期」にきっちり分類していました。これに対し、新ガイドはこうした言い方をなくし、個人差に配慮し、成長に応じた進め方をするよう強調しています。

 これまでは多くの自治体では「離乳の開始前に果汁を与えましょう」という保健指導が通例でした。しかし、新ガイドでは、離乳開始前の栄養源は母乳やミルクが最適で、果汁の必要性はないと明記しました。離乳を進めている間も母乳は子どもの欲するままに与えるよう指摘しています。

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国がまとめた支援ガイドについて「力が入っている。その機運が各方面で高まれば」と期待する田中さん

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 ガイドでは、光市の取り組みを母乳育児支援の先進事例として紹介しています。母乳育児の推進に力を入れ、「おっぱい都市宣言」を一九九五年に市議会で可決。子どもとの触れ合いを大切にした心豊かな子育てを目指しています。

 市健康増進課の保健師田中満喜さんは「母乳育児に積極的で大きな前進です」と評価します。ただ、課題もあります。「ガイドの指摘を実践するには、産婦人科の病院などにも理解や協力を求めていかなければ」

 産後一週間程度は、出産した医療施設にそのまま入院する人がほとんどです。ガイドが示す「五つのポイント」は、医療施設の協力なしには実現が難しいからです。

 「マニュアル通りにいかないのが育児。新たなガイドにもあるように、子どもによって離乳食の進め方にも差があって当然ということを、今後も伝えていきたい」と田中さんは強調します。

 ガイドは、厚生労働省のホームページでも閲覧できます。(平井敦子)

(2007.9.24)


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