介護福祉士や食物調理一級… 県教委プロジェクト 外部講師招きスペシャリスト養成 第一種電気工事士、介護福祉士…。広島県教委は今夏、高校生レベルでは難関とされる資格、検定に挑む生徒のサポートに乗り出した。目標を共有する生徒たちが学校の枠を超えて合同合宿。教諭や外部講師の指導で知識や技能を高め、スペシャリストとして社会に送り出そうという、初の試みである。(村田拓也) 八月上旬、海田高(海田町)の宿泊所に、同高と吉田(安芸高田市)沼南(福山市)庄原実業(庄原市)総合技術(三原市)の県立高五校の生徒約二十人が集まった。 目指すのは、全国高校家庭科教育振興会(東京)の検定試験のうち、和服と洋服、食物調理の三種目の一級合格。県内では二〇〇六年度、家政科などがある六高校で計八人しか突破していない難関である。 合同合宿は一泊二日の日程で、実技演習や自習など計十三時間のメニューをこなす。生徒たちは、海田高の卒業生で、石田あさきトータルファッション専門学校(広島市中区)の天野理香さん(33)から、ジャケットのポケット縫いのこつを学ぶなど、専門学校や企業から招いた外部講師の指導も受けた。 沼南高二年の杉原伊吹さん(17)は「自分になかったものが身に付いた。違う学校の人と学ぶのも楽しい」と手応えを感じた様子。自身も指導し、外部講師の講義も見守った海田高の竹内美子教諭(45)は「生徒同士で刺激を受けていた。互いに励まし合って目標を実現してほしい」と期待していた。 取得・合格倍増へ 高度な資格取得挑戦プロジェクト―。県教委がこう命名して本年度から始めた試みは、学力向上対策として〇六年度にスタートさせた複数の高校による学習合宿の資格取得版だ。 夏休み期間中を中心とした七月から十一月までの間に、同検定試験のほか、毒物劇物取扱責任者▽第一種電気工事士▽日商簿記検定二級▽ファイナンシャルプランニング技能検定三級▽介護福祉士…の五資格・検定についても実施。それぞれ二−六高校の生徒が二泊三日か一泊二日の日程で、集中的にテクニックを高める。 この六資格・検定の取得・合格者は〇六年度で計九十六人だった。県教委は、本年度には百八十四人とほぼ倍増させたい考えだ。 プロの姿勢を学ぶ さらにプロジェクトには、「教員の指導力向上」というもう一つの狙いもある。外部講師はいずれもその道のプロばかり。竹内教諭は「素材の扱い方や道具へのこだわりなど、プロの姿勢が伝わってきた。今後の指導の参考にしていきたい」と話す。 県教委は合同合宿とは別に、合宿に参加した高校の教員を対象にした研修会も計画。各分野の専門家を講師に招き、全体会二回、各資格・検定ごとに二回の計四回を開き、年間の指導計画の作成や、指導方法の改善の研究に取り組む。 県教委指導二課は「教員の資質を高めて取得者を増やし、産業技術の高度化などに対応できるスペシャリストを県内に送り出したい」と意気込んでいる。
(2007.9.3)
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