中国新聞


新救急体制まず検証
産科医療の在り方は


■高機能集約が理想的

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 広島県東部で出産時の救急処置の中核を担ってきた福山市民病院(蔵王町)産科部門が四月から休診し、五カ月が過ぎた。福山市と周辺部の病院、医師会、行政の関係者らが、地域の産科医療の在り方について話し合う官民会議を発足させ、議論を続けている。議長を務める沼隈病院の桧谷義美医師に、国立病院機構福山医療センター(沖野上町)を中心とした新たな救急態勢の課題や、地域の産科医療の在り方などを聞いた。

 ―官民会議での議論はどの段階まで進んでいますか。

 福山医療センターを核とした新たな産科救急体制がうまく機能しているかどうかを検証している。出産の医療現場で、困った事態が起きていないかを尋ねるアンケートを産科医に発送した。

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「官民会議を医師が本音を語り合い、提案する場にしたい」と話す桧谷さん

 ―六月の第二回会合では、福山医療センターで手術が重なった場合の対応などに、開業医の不安の声が出ました。

 手術の重複などで他病院に転送せざるを得なかった例があるのか、アンケートなどを通じて調べたい。転送があった場合、その患者がどうなったかまで確認するつもりだ。受け入れの福山医療センターでも、医師の勤務などに無理が出ていないか検証が必要だ。現場のSOSをキャッチし、今のシステムを続けていけるか話し合うのが官民会議だと考えている。

 ―県東部では、どんな産科救急体制を敷くのが望ましいと思われますか。

 当面、福山医療センターを中心としたシステムを維持したい。ただ、緊急避難的な態勢だ。産婦人科や小児科、専門医が集まった周産期総合医療センターがあるのが理想だ。そういう高度に集約した医療体制を持つことができるのは、大規模な総合病院だ。統合などで、千床前後の高機能総合病院が必要だと考えている。

 ―なぜ、四十六万都市にある市民病院の産科が休診に追い込まれたのでしょうか。

 背景には、日本の二つの医療事情がある。一つは、産科医師の不足。もう一つは、研修制度変更で、若い医師が大都市圏に集中したことだ。そのため、地方の大学病院に所属する医師が減った。福山市民病院に医師を派遣していた岡山大病院も、所属の産科医が減る中、医師の配置を集約せざるを得なかった。

 ―地域の側も、医療体制づくりを大学病院に頼りきっていたという指摘があります。

 そういう側面はある。地域保健対策協議会という官民協議の枠組みはあったが、地域の医師の配置や必要数について話し合うことは少なかった。市民病院の休診を受けて、初めて産科の在り方を協議する会議を設けた。今後は、こういう場を利用し、医師同士が率直に意見を交わし、国や県に提言をしていきたい。


記者の視点 医師不足 理解の輪を

 福山市民病院の産科部門の休診は、日本の医療が抱える問題を端的に示す。それは、産科・小児科に限らず、救急部門に携わる医師の不足だ。背景には、昼夜を分かたない勤務と、訴訟になるリスクの高さという特性がある。それでも、リスクと背中合わせになりながら献身的に働く医師が多いのも事実だ。市民、患者の側が現場の実情を理解する姿勢もまた、望ましい地域医療づくりには欠かせない。(野崎建一郎)


 福山市民病院の産科部門休診 産婦人科に医師2人を送っていた岡山大が派遣を中止し、4月から休診。市民病院が担っていた産科の救急機能を国立病院機構福山医療センターが引き継ぐ新体制について休診前の3月に発足した官民会議で検証、議論している。

官民会議議長の医師 桧谷義美さん  ひだに・よしみ 福山市出身。60歳。1974年に大阪大医学部卒業。専務理事を務める福山市沼隈町の沼隈病院で、整形外科医として働く。福山・府中地域の保健対策協議会の委員長だったことから、産科の官民会議の議長を務める。


(2007.9.3)


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