清潔でも感染 正しい知識を ■かゆくなくても注意 わが子の頭髪こまめに点検 「アタマジラミ」が、広島県内などの保育所や幼稚園、小中学校で相次いで発生している。戦後の混乱期に流行したイメージが強く、親のほとんどは成虫や卵を見たことがない。わが子の感染に気付かないうちに、家族に広がっている―というケースもある。実は衛生状態が良好な欧米でも流行している。「感染は不潔だから」と思い込まず、正しい知識を身につけ、冷静な対応を心掛けたい。(西村文)
「アタマジラミにかかったことをお母さん仲間に打ち明けたら、『うちの子も』と言う人が意外に多くて…。少しホッとしました」。広島市安芸区の団体職員(37)は振り返る。七月中旬、長女(5)が感染した。「頭髪に付着していました」と保育所から卵を見せられ、初めて気付いた。 アタマジラミは主に保育所や幼稚園、小学校の低学年で集団発生する。遊びや昼寝時に頭同士が接触して感染するとみられる。病気を媒介する恐れはないため、保健所に報告する義務はない。そのため広島市をはじめ多くの自治体で、詳しい発生状況を把握できていないのが現状だ。 福山市は独自に、百二十四ある認可保育所に発生報告を義務付け、積極的に感染拡大防止に取り組んでいる。本年度の発生件数は、七月二十三日現在で延べ三十保育所、九十人にのぼる。「感染力が強い。早期に発見し、保護者と協力して駆除することが重要」と小林俊郎保育課長は指摘する。
駆除用の薬剤やシャンプー「スミスリン」の出荷は昨年から増え始めた。今年は昨年の四割増という。発売元のダンヘルスケア(大阪市)の桜間照雄医薬管理部長は、流行の原因として(1)強い殺虫剤のDDTが使用禁止になった(2)シラミを知らない世代が親になった(3)海外旅行が盛んになった―を挙げ、「清潔にしていても感染する恐れはある」と強調する。 桜間さんに、発見のポイントと、薬剤シャンプーを使った対処法を聞いた。まずは、こまめに子どもの頭髪をチェック。感染して間もなくはかゆくないので、注意が必要だ。成虫は猛スピードで動くので発見は難しい。卵を探すのが早道だ。 卵は直径〇・五ミリのだ円形で白色。植物の「ネコヤナギ」のように、毛髪の片面にしっかり付着するのが特徴だ。約七日間でふ化するので、薬剤シャンプーを二日おきに四回使用すれば、次々にふ化しても根絶できるという。 子どもから家族にうつっている可能性もある。熱に弱いので、枕カバーやシーツは洗濯前に六十度以上のお湯に五分以上浸す。タオルは共用しないようにする。床もこまめに掃除機をかける。 「わが子は皮膚が弱いので、薬を使わずに退治したい」という親もいる。目の細かいくしを使って卵と成虫をすき取る方法もある。東京都新宿区保健所では「全米シラミ協会」が推奨する専用くしを区民に貸し出している。オリジナル冊子「復活してきたアタマジラミ」を発行し、ホームページ(HP)でも公開する。 ただ、薬剤シャンプーが効かないアタマジラミも出現している。国立感染症研究所昆虫医科学部の冨田隆史室長らが兵庫や香川など四県で発見した。冨田室長は「今後、薬剤に抵抗性のあるアタマジラミは増える恐れがある」と注意を呼び掛けている。 ■生態や対処 HPで学ぶ ◎ダンヘルスケア「お母さんのためのシラミ講座」 http://www.danhc.co.jp/sirami/index.html
◎東京都新宿区保健所「復活してきたアタマジラミ」 http://www.city.shinjuku.tokyo.jp/division/340500eisei/atamapanfutop/atamapanfutop.htm
◎国立感染症研究所「アタマジラミの殺虫剤感受性調査について」 http://www.nih.go.jp/niid/entomology/headlice.html
(2007.8.8)
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