正社員登用 助成2件だけ 中国地方 自治体の半数は未実施 母子家庭の母親の就業を後押しするため、国が二〇〇三年度に設けた助成事業が、中国地方では四年間で二件の実績しかないことが二十七日、分かった。母親をパート勤務から正社員へ雇用した事業主に、一人当たり三十万円の奨励金を出す制度。国に呼応する自治体が少なく、「実態に即していない」と疑問の声が上がっている。(滝川裕樹)
正社員への転換奨励金事業は、国が財源の四分の三、都道府県や市などが残りを負担する。自治体の福祉部門が窓口となり、福祉事務所の機能がない町村は県が実務を担う。 制度創設の〇三年度から〇六年度末までに、中国地方で助成金を受けて正社員になった母親は宇部市で二人だけ。全国でも〇六年末で九十二人にとどまっている。 国と歩調を合わせて事業を実施する自治体が少なく、岡山県では県と二十七市町村のすべてが未実施。広島県も広島市や呉市など半数以上が行っていない。中国地方五県の実施自治体は、県がカバーする分を含めて51%にとどまっている。 広島市児童福祉課は「実績が上がっておらず市の財政難の中で、ほかの支援事業へ優先的に予算を回している」と説明。岡山県保健福祉部は「日ごろ企業と接触しない福祉部門が担当する難しさがある」という。 ほかの自治体でも「ハローワークが担当する方がよい」「安いパート労働力を求める企業にとって三十万円程度の助成金では実効性に乏しい」と否定的な見方が強い。 これに対し厚生労働省母子家庭等自立支援室は「事業主への周知不足で実績が上がっていないのは事実。制度を運用する自治体に、福祉部門と商工部門の職員が連携して取り組むよう要請している」としている。
(2007.6.28)
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