認定タクシー 広島・山口の3社運行 「子育てタクシー」をご存じだろうか。全国子育てタクシー協会(高松市)の認定を受けたドライバーが送迎するタクシーのことだ。中国地方では、山口県西部の二社が昨年五月から、広島市内の一社が今年五月下旬から運行している。子どもたちや保護者へのきめ細かい配慮が特徴のようだ。(平井敦子)
▽荷物運びなど細かい配慮 安佐南区にある、子育て中の保護者を対象にしたオープンスペース。ゼロ―二歳の子どもたちと母親たちに加え、この日は、異色のメンバーが加わっていた。西区の錦タクシーの男性乗務員三人だ。「子育てタクシー」の認定を受けるため、実習に訪れた。 ▽接し方を学ぶ 子どもたちや、保護者との接し方を学ぶのが狙い。乗務員たちは、おもちゃで子どもと遊んだり、母親たちに子連れで乗る時の要望を尋ねたりして、約一時間を過ごした。 「ベビーカーがあるときは、受け取ってトランクに入れてもらえると助かる」「子どもが騒いでしまったとき、露骨に嫌な顔をしないでほしい」…。そんな母親たちからの生の声に耳を傾けた。 認定を受けるには、こうした実習のほか、全国子育てタクシー協会が作成したマニュアルも習得しなければならない。 マニュアルでは、ゼロ―六歳の子どもと保護者を送迎する「カンガルーコース」、チャイルドシートを備えてゼロ―十五歳の子どもが一人で乗車する「ひよこコース」などのコースを設定。保護者の荷物を積極的に運んだり、幼い子ども一人だけを送迎する時は車まで手をつないで歩いたり…など、細かい配慮点を再確認する。
▽利用は登録制 錦タクシーで認定を受けたドライバーは三十四人。利用は登録制で、申請時には必ず面談をして個々のニーズを把握しようと心掛けている。 一足早く運行を始めた下関市の日本交通産業と宇部市の宇部構内タクシー。二社とも、小学生以下の子どもが一人で乗車する場合にだけ、タクシー料金を一割引にしている。月四十件前後の利用のほとんどは、保育所や放課後児童クラブと自宅、あるいは塾と自宅の送迎で、子ども一人を乗せる、という。 規制緩和が進み、競争が激化しているタクシー業界。新サービスの導入は、新たな顧客の獲得につながっているのだろうか。宇部構内タクシーの荻野和哉業務課長(42)は「タクシードライバーに対して怖いイメージがあるのかもしれない。子どもたちにも安心して乗ってもらえるタクシーだと知ってもらい、長い目でみて顧客獲得につなげたい」と期待している。 全国子育てタクシー協会の内田輝美副会長は「子育ての真っただ中で、どうしてもタクシーを利用する必要がある方がいらっしゃる。基盤整備を進め、受け皿になれたら」と話している。 (2007.6.4)
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