中国新聞


生徒に性的発言 3度目セクハラ
停職は妥当?


 広島県教委「厳しい処分」 −他教委では免職も

 相次ぐわいせつやセクハラ行為で教職員を懲戒処分している広島県教委が今月、女子生徒へのセクハラ行為で県立高の男性教諭を停職三カ月にした。この教諭は過去に二度、セクハラ行為で懲戒処分を受けている。県教委は「厳しい対応」とするが、この教諭の過去二回のセクハラ行為は、他県では免職もあり得るケースだ。児童・生徒への性的嫌がらせには「より厳しい処分で臨むべきだ」との指摘もある。(村田拓也)

図「セクハラ・わいせつ懲戒処分教職員」

 県教委が県東部の県立高の男性教諭(41)を停職三カ月の懲戒処分にしたのは十一日。指導する女子生徒が不倫交際やキスを求められたと受け止める発言を繰り返し、不快感を与えたと判断した。

 この教諭は、生徒へのセクハラ行為で二〇〇三年三月に戒告、同七月に停職一カ月の処分を受け、同行為で三度目という極めて異例の処分だった。一度目は所属高の女子に抱きつく行為や体罰。二度目はクラブ活動の指導中に女子の上腕部をつまむなど体に頻繁に触れたとされる。

●前歴も勘案

 「今回の事案で停職三カ月は相当厳しい」。榎田好一教育長はこう述べ、過去の処分も加味して判断したと強調する。ただ、三度目の処分に対し、県教委には県民から「処分が甘い」「教育者としてあるまじき行為だ」などの声が計二件寄せられたという。

 中国地方五県で、本年度までの五年間にわいせつやセクハラ行為で処分を受けた教職員は計四十六人。うち広島県教委分が二十七人と六割近くを占める。四十六人の処分内容を見ると、免職・解雇が二十六人と半数を超える。停職三カ月となった今回の広島県教委と同様の事例はなかったが、児童・生徒が被害者となったケースでは、厳しい処分が目立っている。

 岡山県教委は昨年五月、女子生徒に抱きついた男性教諭を、〇四年度にはいずれも女子生徒にキスをした県立高の男性教諭二人を、すべて免職とした。鳥取県教委も〇五年十一月、複数の女子生徒の手を握るなどした県立高の男性教諭を免職にしている。両県教委は「被害者が子どもで、影響の度合いを考え厳しく対応した」と説明する。

●「認識甘い」

 一方、広島県教委教職員課は、他県では免職となった同様事例もある男性教諭の過去二回の処分について「過去の事案などを踏まえ、非違行為の内容に即して処分した」と説明。適正な措置だったとの認識を示す。

 セクハラ問題に詳しい県立広島大の若尾典子教授(ジェンダー研究)は「三度目なのに停職三カ月という広島県教委の今回の処分は、セクハラへの認識が甘い。最初の戒告から軽すぎた」と指摘する。「強い権限を持つ先生の行為は、被害者のトラウマ(心的外傷)になりやすい。人格の否定でもあり、厳しい対応が必要だ」と主張する。

●個別指導も

 県教委は〇五年度、児童・生徒へのセクハラ行為をめぐる処分について「停職、減給、または戒告。特に悪質な場合は免職とする」との指針を設けた。いずれを適用するかは過去や他県の事例も参考にしている。さらに、セクハラなど再発の恐れがある行為で懲戒処分を受けた教職員には、所属校長が個別指導をする方針も打ち出した。

 三度目の懲戒処分を受けた男性教諭に対しても過去、校長らが個別指導をしていたが、結果として生かされなかった。

 若尾教授は「セクハラの背景には、コミュニケーション能力の問題がある。再発防止の指導を現場に任せるのではなく、県教委として能力を高める再教育プログラムをつくる必要がある」と提起している。

(2007.5.26)


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