中国新聞


06年度 広島県教委、懲戒相次ぎ51人
不祥事防止へ名前公表を


 ■わいせつ倍増10人 内容も悪質・深刻化

 広島県内で教職員の不祥事が頻発している。三月だけで三人を免職、解雇するなど十五人を懲戒処分。前教育長が厳重注意を受ける異例の事態となった。しかし、管理職を除いては免職や解雇であっても名前を公表していない。セクハラや飲酒運転など社会的に許されない行為については、再発防止の観点からも名前を原則公表すべきではないか。(報道部 村田拓也)

懲戒処分者数の推移

 「重大な不祥事が続き大変憂慮している。自分のこととして不祥事をなくす取り組みをするよう、指導徹底を図る」。榎田好一教育長は二日の就任会見で、不祥事への対応をこう述べた。

 その三日前の三十日。文部科学省への帰任を前に、退任会見をした関靖直前教育長は「重大な事案が続き、大変申し訳なく思っている」と謝罪した。相次ぐ不祥事の責任を問われ、関氏は二十九日に厳重注意を受けたばかりだった。

 県教委は二〇〇六年度、前年度より七人多い延べ五十一人を懲戒処分した。免職、解雇は七人で四人増。被処分者の総数とともに、ここ五年で最悪だ。

 わいせつ・セクハラ行為が六人増の十人、体罰が七人増の十人などと、内容も悪質・深刻化している。

 三月は、三度にわたって計十五人を処分する異常事態となった。十二日に体罰などで三人を処分。二十七日には飲酒運転による人身事故などで二人を免職・解雇し、二十九日にはわいせつ行為で、元県立高校長の臨時教諭を免職にするなど計十人の処分を決めた。

5県でも突出

 〇六年度の広島県教委による懲戒処分者数は、中国地方で突出する。五県と広島市の各教委は、計九十三人を処分。広島県教委が過半数を占め、二番目に多い鳥取(十三人)の四倍近い。〇二年度から五年間の累計でも四百七人のうち広島は二百十四人に上る。

 「国旗国歌をめぐる処分に加え、旧文部省の是正指導後は不祥事に厳格に対応している」。広島県教委の幹部は、こう受け止める。ただ、国旗国歌をめぐる懲戒処分は〇六年度は十一人。それだけでは説明はつかない。

 県教委も昨年度は夏休みの研修を全校に呼び掛け、研修用の新資料も作成した。十二月には、酒酔い運転を免職とするなど懲戒処分の指針を厳罰化。県立学校長会議などで不祥事の根絶を繰り返し求めた。しかし成果は出ない。教職員課の常盤木祐一課長は「特効薬はない。粘り強く施策を積み重ね、教職員一人一人の自覚を高めるしかない」と言う。

 不祥事を減らす対策の一つに、被処分者の実名公表がある。中国地方では岡山と鳥取の両県教委が、すべての懲戒処分で原則実名を公表。島根県教委は免職と飲酒運転による停職、山口県教委はセクハラなどでの免職で、原則実名を公表している。広島市教委は昨年一月から、免職を原則公表に切り替えた。

「原則非公表」

 広島県教委は〇二年に定めた内部基準で、管理職や警察に逮捕された場合などを除き「原則公表しない」との姿勢を貫く。榎田教育長は「どう不祥事を防止するかの観点と、その後に教職員が意欲を持って仕事を続けていけるかのバランスが必要。もう少し時間がほしい」との立場をとる。

 実名公表には、被害者のプライバシー保護への配慮などが必要なのは確かだ。ただ教職員は人材育成にかかわる責務の重さから、一般の公務員以上に高い倫理観が求められる。県民からの信頼をこれ以上損なわないためにも、「できることはすべてやる」との姿勢を示す必要がある。


広島県教委の懲戒処分の公表基準 2002年1月に定めた内部基準で、懲戒処分は「個人のプライバシーに十分配慮し、原則として公表する」と規定する。公表する内容は、処分年月日▽所属▽役職▽年齢▽処分内容▽理由の概要―の6項目。名前の公表は「原則、個人情報として行わない」とし、校長など管理職の処分や警察に逮捕されるなどした場合を例外に挙げている。

(2007.4.12)


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