広島市矢野地区で導入準備 あいりちゃん事件教訓 電子タグで所在確認 木下あいりちゃん事件が起きた広島市安芸区矢野地区で、ボランティアの力と携帯電話や電子タグの情報技術(IT)を活用し、地域ぐるみで児童を見守る新たなシステムの導入準備が進んでいる。人の目と先端技術を組み合わせることで万全を期すのが特徴。今年秋の実証実験を目指す。(和多正憲)
あいりちゃんが通っていた矢野西小の隣、矢野南小の全校児童約九百四十人と保護者のほか、見守り活動をしている地域ボランティアの中から約五十人に協力を仰ぐ。矢野南小PTAと通信事業者のKDDI(東京)、中国電力、広島市立大、市などが一月に協議会を結成して準備している。 計画では、学区の通学路沿いの電柱約三十本に通信機能がある電子タグ(縦五センチ、横三センチ、厚さ二・五センチ)を設置。児童とボランティアにタグの読み取り機能が付いた携帯電話を一人一台ずつ貸与する。 児童が登下校の際、タグの近くを通ると、時間や場所などの情報が児童の携帯を介して自動的に近くで見守り活動をしているボランティアの携帯に送られる。ボランティアがメールで情報を送信すると、保護者や教員はインターネットで児童の所在を確認できる。 技術的にはITだけで児童の所在情報を知ることはできるが、ボランティアが児童の様子などを確認することで見守り効果を高める。電話をかけずに複数の携帯電話で情報を共有できるアドホック通信を活用して低コストでの運用を実現する。 子どもの見守りシステムのモデルを選定している国の事業に応募し、認められれば九月から実験を始める。 協議会メンバーの角田良明広島市立大教授(情報工学)は「見守り活動をITで補強するのが目的。人と情報通信が連携することで多くの地域の目で子どもを見守ることができる」と説明。同小の藤原路子校長は「保護者やボランティア、教員だけでは限界があった。地域が一体となった活動に発展させたい」と期待している。
(2007.3.7)
|