中国新聞


乳幼児向け英会話教室盛況
1−3歳児増加 親も参加、気分転換に


 乳幼児向けの英会話教室やサークルが、広島市をはじめ中国地方で人気を集めている。特に、3歳までの低年齢で学び始める子どもたちが増えているようだ。親の英語コンプレックスが早期教育を後押ししたり、親も参加して育児の息抜きや気分転換につながったりしているケースもある。ニーズに応えようと、各教室も発達に応じて、遊び感覚で学べるプログラムに工夫を凝らしている。(平井敦子)

 「Hop、hop、jump」。英語の掛け声に合わせて、三歳までの子どもたちが、母親と一緒に手をつなぎ、ぴょん、ぴょん跳びはねる。体を動かしながらのレッスンには、笑い声が絶えない。

280ヵ所を紹介

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「ちびっこABC」で、英語の掛け声に合わせて跳びはねる子どもたち

 広島市東区の英語講師平岡ユミ子さん(54)が、東区の牛田公民館で月三回開いている英語サークル「ちびっこABC」には、約四十組の親子が参加。米国出身の講師も加わり、英語を介しながら約一時間、絵本や道具などを使って遊ぶ。「楽しく体を動かした分だけ、英語を吸収してくれる」と、平岡さんは企画づくりに力を入れる。

 西区の主婦津賀佐和子さん(34)は、長女の栞(しおり)ちゃん(3)が一歳のころから、このサークルに通い始めた。「家の外で何か始めたかった。私も娘も友だちができるし、何より楽しい。娘が英語のリズムに慣れてくれれば一石二鳥」。遊び感覚で参加している。

 幼児の習い事といえば、水泳、リトミック、ピアノなどが人気だが、今、英会話もその一角を占める。中国新聞情報文化センターが運営している育児情報サイト「キャプママくらぶ」は三月から、子ども対象の英会話教室を紹介するコーナー「ひろしまで探す子どもの英語教室」(http://www.hiroshima-caps.ne.jp/kids/english/)を開設。掲載されている教室は約二百八十カ所に及ぶ。

5年前の2.4倍

 音楽を活用した英会話学習に力を入れる「ヤマハ英語教室」は、全国の約千五百会場で展開。一〜三歳の生徒数は五年前の二・四倍に。入会申し込みの問い合わせは、三歳以下が七割を超すという。

 中区のヤマハ紙屋町センターの川口弘子さんは「五、六年前から英会話の開始年齢が、一、二歳にシフトしてきた」と指摘。「小学校の教育課程への英語導入が検討されていることも保護者の関心を集めている」とみる。

 ゼロ歳から高校卒業までの継続したプログラムがある「アミティーイングリッシュスクール」は、中国地方に十五校を設置する。乳幼児の生徒に対応するため、おむつ替えシートや、角の丸い家具を置くなど、教室のハード面でも気を配る。一歳五カ月の息子と中区の広島八丁堀校に通う母親(35)=中区=は「私自身英語に苦労したので、子どもは早くから学ばせたい」と打ち明ける。

 それぞれ月に七千〜二千円程度の費用がかかるだけに気になるのは、その効果。早期の英会話学習は、どれぐらい身に付くのだろうか。広島県内と山口県東部に三歳児から中学生までを対象とする約二百五十教室を展開するECCジュニア。広島センターの和田雅子主任は「幼児は英語を日本語に訳さず、英語のまま理解できる柔軟さがあり、自然に学べる」と説明。「性急に結果を求めず、楽しく学ぶ姿勢が大切」とアドバイスする。

 広島大大学院教育学研究科の湯沢正通助教授(発達心理学)は「子どもが言語を自然に学べる能力は、十歳ぐらいで失われると言われている。日本語とリズムが大きく違う英語を、幼いうちから学ぶ効果はある」と指摘する。

 その上で、「英語を学ぶ分だけ、日本語を学ぶ経験が失われることになるが、週一時間ぐらいの学習は日本語の習得には影響しないし、それだけでは英語の習得にも十分とは言えない」と話し、成長に応じた継続的で系統的な学習の必要性を強調している。

(2007.3.5)


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