中国新聞


因島南部の幼小中一貫校
小学校存続 意見は二分


■「町衰退する」 見直し求め 広がる署名
■「分裂避ける」 PTA 粘り強く説得へ

 尾道市教委が因島南部地区で進める幼・小・中一貫の因南学園(仮称)の設置計画をめぐり、2地区の住民らが小学校存続を求める署名活動に、相次いで乗り出した。1幼稚園と3小学校、3中学校を統合して一貫校を設置する計画に、住民は「地域に小学校は必要で説明も不十分」と反発する。一方、PTAなどは計画推進を求める。より良い教育環境づくりに向け、行政、保護者、地域がひざ詰めの議論を深める機会としたい。(田儀慶樹)

地図「因南学園」▽合併で構想拡大

 「三庄で小学校と中学校が同時に消えれば、町の衰退は目に見えている」。因島三庄町の住民らでつくる「三庄小の存続を求める会」の青木悦子代表(57)は、懸念を募らせる。「小規模校は細かな指導が行き届き、アットホームな雰囲気の中で情緒豊かな子どもが育つ」とも訴える。二十六日現在、全町民の35%に当たる約千六百人が署名を寄せた。

 昨年一月の編入合併前、旧因島市教委は生徒数の減少を理由に三中学校を統合する方針を決定していた。この計画を合併で引き継いだ尾道市教委は、幼稚園と小学校も加えた一貫校設置の構想に拡大させた。

▽説明会20回開く

 なぜ幼・小・中一貫なのか―。(1)三小学校も児童減少が見込まれる(2)多くの同級生と出会うことで社会性が身につく(3)十二年間で発達状況に応じたカリキュラムが組める(4)三小の校舎はいずれも老朽化している―が、市教委の示す理由である。

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因南学園の開校に向けて進む旧因島土生校舎の解体工事(尾道市因島土生町)

 市教委は昨年一〜五月に、保護者らを対象に計二十回の説明会を実施。「地元の大方の理解は得られた」と判断、教育委員会議で学園設置の方針を決定した。

 因島田熊町では「田熊小の存続を求める会」が署名活動を展開。藤原繁広代表(53)は「造船活況で人口が減ることはない。小学校の統合は、少子化の状況が確認できる十年後をめどに検討すべきだ」と見直しを求める。二十六日現在、全町民の半数近い約二千人分の署名が集まった。

▽行政との議論を

 一方、統合される七校・園のPTA会長たちは市教委の考えに理解を示し、計画推進を求める。二十三日には六人が亀田良一市長らに面会し、学園設置を重ねて要望した。市PTA連合会因島ブロックの村上善彦代表は「署名を集めているグループと対立して、地区が分裂するのは避けたい。私たちも粘り強く説得していきたい」と、地域にしこりを残さない策を模索する。

 平谷祐宏教育長は計画を進める姿勢を示した上で、「小学校存続を求める声は厳粛に受け止める。今後も住民との話し合いを続けたい」と対話を重視する構えだ。

 市教委は二十九日午後七時半から、因島土生町内で説明会を開く。平谷教育長らが出席し、計画の意義や経緯、学園の基本設計などを伝え、質疑に応じる考えだ。二月五日には三庄公民館で住民主催の討論会もある。

 尾道市への編入合併から一年。因島の子どもたちの学校教育は、どうあるべきか―。進路は、行政と住民の論議の積み重ねから見いだすほかない。


因南学園 土生、三庄、田熊地区の3小・3中学校と土生幼稚園の計7校・園を統合し、因島土生町にある旧因島高土生校舎跡地(敷地面積2万5400平方メートル)に一貫校を新設する計画。尾道市教委は2009年4月の開校を目指し、旧校舎の解体工事を進める。3小の各児童数は181―154人、3中の各生徒数は123―89人(1月1日現在)。

(2007.1.29)


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