中国新聞


広島中・高 今春で開校3年
一貫教育 利点と宿題


 東広島市高屋町に県立初の併設型中高一貫校「広島中・高校」が開校して、今春で丸3年を迎える。6年間に及ぶ一貫校のメリットを生かし、教科の枠組みを超えた授業などを導入。学力向上に一定の成果が表れている。一方で、高校の学習内容を中学で先取りするため、高校からの入学者と進度の調整をどう図るかなど課題もある。(小山顕)

■「ことば」授業 学力向上/高校での進度どう調整

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2人の教諭で論理的な思考力を身に付けさせる広島中の「ことば」の授業

 広島中では開校以来、国語教諭と他教科の教諭がコンビを組んで教えるユニークな授業「ことば」を続けている。一貫校に認められた特例を生かし、本来は必修科目に充てる三十五時間分を活用。クイズ形式や討論会などを通して、論理的な思考力を身に付けるのが狙いだ。

▽教科の枠超える

 「数学の問題を論理的に考えられるようになった。新しい見方が発見できる」と三年澄川絵里さん(15)は歓迎する。番本正和校長は「中学の時に思考力や表現力をじっくり身に付けておけば、高校に上がった時に成果が出る」とメリットを説く。

 広島中・高は県教委が「六年間を見通した教育で、生徒の能力を伸ばせる県内のリーディング校」と位置付け、二〇〇四年四月に開校した。中学、高校の垣根を外し、基礎充実期、探求期、発展期と二年ごとに区切って細かな指導計画を立てられるのが特長だ。

 「六年あれば、ゆとりを持って基礎を教えられる」と高校の早川政之教頭。PTAの西本潔会長(49)も「基礎をしっかり教えてもらえるうえ、高校入試がないので、子どもが伸び伸びしている」と評価する。

 中高生がお互い交流できるのも、魅力の一つ。中学一年から高校二年生までが一緒に宿泊する「短期入寮」では、上級生が下級生に勉強を教える。「先輩の頑張る姿を見て、刺激を受ける」と生徒にも好評だ。中高の教諭同士も年に約一週間、授業を参観し合い、自分の授業に役立てている。

▽志願倍率は高く

 一貫校の効果は、学力や志願倍率にも表れている。毎年六月、県内の中学二年生が国語、数学、英語の三教科で受ける県の「基礎・基本」定着状況調査では、広島中の平均点は県平均を二六・九−一九・一点上回り、「ことば」の授業の効果が出ているという。

 中学の志願倍率は、新設校としての注目度から一二・一倍に上った初年度以降も六・七六倍、五・二八倍と高水準を保っている。

 一貫校の設置は一九九九年四月、当時の文部省が特色ある学校づくりや高校受験の競争緩和を目的に学校教育法を改正し、公立の中高一貫教育を認めたのがきっかけ。

 県内の市立では、広島市の安佐北中・高が〇三年、福山市の福山中・高が〇四年に併設型を開校。生徒や教諭同士の交流を進める連携型一貫校も、北広島町の加計高芸北分校と芸北中、尾道市の御調高と御調中、東広島市の賀茂北高と豊栄中が導入している。

▽中学で卒業試験

 併設型の広島中・高は四月、初めて中学生が高校に上がる。ただ、高校受験がないため、「中学生の学習意欲をいかに持続させるかが難しい」と言う。そこで来月には、三年生に卒業テストを実施。合格するまで再テストや補習を受けさせ、受験生と同じ緊張感を持てるよう工夫を凝らす。

 さらに、必要になるのは授業進度の調整。高校は他の中学からの入学者も受け入れるため、新年度から数学のクラスを広島中と他の中学の出身者ごとに分け、三学期からは同じ単元を一緒に学べるようにする。

 一貫教育の利点を生かしつつ、高校からの入学者に対してきめ細かな指導をどう進めるか。新年度からの大きな宿題である。


  中高一貫校 中等教育学校、併設型、連携型の3種類がある。中等教育学校は、一つの学校で6年制教育を実施。併設型は中・高が同一設置者で、入試をせずに中学から高校へ進める。連携型は、設置者の異なる中・高が生徒や教諭同士の交流を進める。

(2007.1.8)


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