中国新聞


いじめた側もケアを
いじめ緊急提言 中国地方の声


 政府の教育再生会議(座長・野依良治理化学研究所理事長)が、二十九日公表したいじめ問題の緊急提言を、中国地方の教育関係者は評価や疑問などそれぞれの視点で受け止めた。いじめをした児童・生徒への対応や、いじめにかかわったり放置、助長したりした教員の懲戒処分には慎重な運用を求める意見が目立った。

 情報共有 保護者と信頼強化
 社会奉仕 懲罰的」は逆効果

 提言には、学校はいじめを隠さず保護者らに報告し、家庭や地域と一体で解決に取り組むとの項目が入った。いじめに関し児童全員の面接を進める福山市霞小の小林浩校長は「兆しの段階から情報を共有し、子どもを含めて一緒に対応を考えることが欠かせない」と強調。「学校が積極的に情報を出すことで保護者との信頼関係も強まる」と前向きにとらえる。

 「いじめ問題は保護者や地域が向き合わないと解決しない。その意味で評価する」。地域ぐるみで子どもの見守り活動に取り組み、本年度の文部科学大臣表彰を受けた周南市菊川小PTAの徳原尚一会長も歓迎した。

 一方いじめた側への対応の具体例として「社会奉仕」「別教室での授業」を挙げた点に疑問も出た。「いじめた子どもにも言い分があり、話を聞いてほしいと思っている。『懲戒』を与えるよりもケアが必要なのに」と指摘するのは特定非営利活動法人(NPO法人)ひろしまチャイルドライン子どもステーションの上野和子理事長。広島県公立中学校長会の斎木俊彦会長も「社会奉仕などが懲罰的になれば逆効果」と慎重な取り組みを求めた。

 提言は評価する広島大大学院教育学研究科の林孝助教授だが、教員の懲戒処分は「誰がチェック機能を果たすのか疑問だ。学校での責任の所在が後で明らかになる場合もある」と懸念を示す。

 広島県教職員組合の山今彰委員長と島根県教職員組合の多賀三雄・執行委員長はともに「いじめを防ぎ切れない背景には教員の多忙がある」と指摘。ゆとりをもって教員が子どもと向き合える環境の整備が必要との考えを強調した。

(2006.11.30)


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