行動できる力を現場に 【社説】 「いじめなど問題を起こす子どもに対し指導、懲戒の基準を明確にし、毅然(きぜん)とした対応をとる」。政府の教育再生会議が出した緊急提言を見て、こんな当然の内容しか出せないのかと思った人もいるに違いない。当たり前のことでも、やってみるしかない面もある。何より教育現場で状況に即して動ける体制を整え、絵に描いたもちにならないようにしてほしい。 提言は八項目ある。最初に、いじめ解消の第一義的な責任は校長、教頭、教員にあると、実行責任者を明示した。いじめた子だけでなく、見て見ぬふりをする者も加害者とみなし指導する―など、見るべき点も少なくない。ただ、いじめを放置した教員への懲戒処分導入など、教育基本法の改正を先取りしたような管理強化の傾向が目立つのは気になる。 提言に記すのは見送られたが、会議の一部メンバーから、いじめた児童・生徒への出席停止を保護者に命じる措置の提起もあった。「いじめは絶対許されない反社会的な行為」だが、加害側の子どもたちはゲーム感覚で、十分自覚していないケースも多い。「なぜ被害者ばかりが不登校などマイナスの人生を背負わされるのか」という疑念から出た提起なのだろう。 しかし、いじめる子を学校から一時的に排除しても根本的な解決にはなるまい。いじめる子もストレスを抱え「背景にある劣等感や寂しさなど感情の制御法を教えるのが大切」という指摘もある。いじめとは何か、定義は難しい。受け取る側のあり方で、ささいな一言が傷つけることもある。 「毅然とした対応」の例として別教室での教育や社会奉仕なども挙げている。その前に、いじめの小さな芽を逃さず、子どもに考える時間を与え、教員、保護者が向き合う姿勢が欠かせない。 いじめ自殺を防ぐため、提言では「いじめを理由にした転校も認められる」ことを周知するという。我慢が限界なら逃げればいい、というのも一つの方法だ。 いじめ自殺は、日本だけではない。米国でも二〇〇三年の十五〜二十四歳の死因の三位に自殺がランクされ、いじめが絡むケースが際立つ。英国でもメールなどによるいじめが後を絶たないという。 解決策のモデルはなく、具体的なケースごとに考え、学校現場が力を培い、対応していくしかない。保護者、地域を含む「社会総掛かり」で、腰を据えて支える覚悟を持ちたい。 (2006.11.30)
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