中国新聞


達人の知恵 若いママに
中高年サークルが連続講座 広島


 子どもとの世代間交流を進めている中高年サークル「たつじんくらぶ」(吉原通庸代表)が広島市女性教育センター(WEプラザ、中区)と連携し、子育て中の母親などが対象の新たな催しに取り組んでいる。人生経験豊富なメンバーが、伝統文化や生活の知恵を毎回「伝授」。育児に追われる母親にひとときの安らぎを味わってもらい、家庭教育や家族のコミュニケーションづくりにも役立ててもらおうと企画した。(伊東雅之)

 ■掃除の工夫から茶道まで

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田家さん(中央)から茶席での作法やお点前について教わる主婦たち

 「堅苦しい流儀をあまり気にしないで。もてなしに対して感謝の気持ちが起これば、自然と表情や立ち居振る舞いにも表れるものですから」。

 厳かな茶席の雰囲気でたてられたお茶を、慣れない手つきで口に運ぶ若い主婦らに、たつじんくらぶのメンバーで表千家講師の肩書を持つ田家清子さん(73)=東区=が優しく声を掛ける。

 WEプラザが主催、会場になり、今月始まった「暮らしの中の『昔いろいろ発見隊』」。和服の着付けや、ほうき、ぞうきんを使い、ごみを出さない掃除の工夫、おせち料理の作り方など伝統文化や生活習慣を子育て世代に教える連続講座だ。

 茶道をテーマにした二十一日は、二十、三十歳代を中心とする主婦ら十五人が参加。講座の間、センターに登録する市民ボランティアやグループが参加者の子どもたちを預かり、母親たちはしばし子育てを忘れて、「和」の世界に浸った。

 講座を提案した、たつじんくらぶは、広島市などに住む五十〜九十歳代の男女約九十人で構成。各メンバーが長い人生を通して身に付けた特技や経験、古き良き風習を若い世代に伝えようと、三年前から市内の公民館で小学生向けの体験講座を実施してきた。

 新たな体験や知識に目を輝かせる子どもを教えるうちに、吉原代表らは、親たちも、そうした体験にあまり触れていないことに気付く。昔は、祖父母と孫の触れ合いや近所付き合いの中から自然に身に付いていた知識が、核家族化やライフスタイルの欧米化で伝わりにくくなっているのだ。

 「親子のコミュニケーションにも役立つのではとも思っていたが、子どもが講座で学んで帰った内容を家で話しても、親が知らないため、会話が続かないことも見受けられた」と吉原代表は指摘する。「ならば、親の世代にも、同じように講座を開設しよう」と始めたのが、今回の企画だ。

 募集した計四回の講座はいずれも、十五人の定員を上回る人気。十カ月の長女を託児サービスに預けて参加した松林朋子さん(31)=西区=は「時間が許せば、こうした催しに加わりたいと思っていたが、子どもがいると参加は難しかった。気分もリフレッシュでき、とてもありがたい」と喜ぶ。指導した田家さんも「若いお母さん方の真剣な姿に、やりがいを感じながら教えることができた。素晴らしい出会いの場だった」とほほ笑む。

 吉原代表は「母親世代にも『和』や『伝統』への関心が高いことが分かった。今後も、いろいろなメンバーの特技を生かした親世代向けの講座を考えてみたい」と思いをめぐらせている。

(2006.11.28)


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