いろんな特典競いたい 【社説】 広島県内の経済団体や県などが、子育て家庭の支援組織「こども未来づくり・ひろしま応援隊」を発足させ、協力する企業や商店の募集を始めた。子育て家庭などを対象に、来年二月から買い物での割引や優先座席の設置などのサービス開始を目指す。国も制度の導入を検討する中、企業主導の地域の試みを定着させたい。 事業名は「子育て応援イクちゃんサービス」。十二歳以下の子ども連れに、料金割引やポイントの上乗せ、景品のプレゼントをする。施設や飲食店での子ども連れ優先席の設置などを促進する。約二千社の企業・店舗の参加が目標で、約二十万世帯が対象になる。 この種のサービスは他県でも実施している。広島のように組織の設立から運営まで、経済団体加盟の企業が費用を負担した例はあまりないという。 応援隊には広島県商工会議所連合会、県中小企業団体中央会、県中小企業家同友会、広島経済同友会など六団体が名を連ねた。背景には、少子化がこのまま進むと、地方での労働人口の確保が難しくなるとの危機感がある。二〇〇五年の広島県の人口は自然減に転じ、合計特殊出生率は一・三〇と過去最低になった。いろんな手だてを講じて、子育てにやさしい社会づくりに貢献していく。サービスはその第一弾というわけだ。 どんなサービスへのニーズがあるのか。約千七百人の保護者を対象にしたアンケートでは、「飲食店内の子ども連れ優先席の設置」「商品・入場料の割引・ポイント優待」「買い物や映画館などの託児施設設置」が上位を占めた。 こうした事業では企業側の持ち出しも少なくない。だがアイデアを競う形で取り組めば、県民に企業の力や社会貢献度をアピールすることにつながるはずだ。 今年一月、子どもが三人以上いる世帯を対象に支援を始めた石川県では、加盟店が約千二百店、対象世帯も八割強の一万四千世帯になった。いしかわ子育て支援財団が商店街などを回って参加を要請する地道な活動が実を結んだ。定期預金の金利を上乗せする金融機関や、リフォーム代金などを割り引く住宅会社などサービスも多彩だ。石川だけでなく北陸圏域に広げることも検討しているという。 確かに独自施策を県ごとに競争することも必要だろう。しかし将来は、連携し合って地域ブロックで取り組んだ方が効果的で、事業の拡大も期待できる。 (2006.11.27)
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