2005年度276件 52%は実母 島根県内の児童相談所、市町村に寄せられる児童・生徒虐待の相談件数が急増している。ケースとしては、親の発言や態度で子どもの心に傷を負わせる「心理的虐待」が最多。県は児童福祉法改正に伴い、全市町村に相談窓口を設けたり、市町村レベルで関係機関同士をネットワーク化させたりするなどの対応を進めている。(加納亜弥)
県健康福祉部青少年家庭課によると、昨年度児童相談所と市町村に寄せられた虐待相談件数は計二百七十六件。二〇〇一年度から百二十件前後で横ばいを続けていたが、〇三年度の百十九件から二倍以上に膨らんだ。 そのうち、児童相談所が受けた相談九十八件の中で最も多いのが心理的虐待で、全体の約42%。食事を与えないなどの育児放棄(ネグレクト)が約39%で、身体的虐待が約18%と続いた。性的虐待は全体の約1%だった。 虐待者は過半数の約52%が実母で、約34%が実父。同課は「子育てへの不安が母親に多分にかかっていることの現れ。県内でも核家族や母子家庭が増えているため、子育てに疲れても身近に相談する相手が少なくなっているのも原因ではないか」とみる。 〇五年四月、児童相談所に集中していた相談を市町村など地域レベルでも対応させる点を柱とする改正児童福祉法施行を受け、県内でも全市町村で児童家庭相談窓口を設けている。このため市町村の窓口が軽微なケースでも虐待とみなしていることも背景にあるという。 改正児童福祉法では、県内の各市町村で病院や警察、児童相談所など、地域の関係機関でつくる協議会を設置するよう指示。現在、県内二十一市町村のうち、十五市町村で設置されている。また県は中央、出雲、浜田、益田の県内四児童相談所に、関係機関の橋渡しや、里親制度の支援などを担う「地域連携・女性相談スタッフ」を各一―三人配置している。 同課によると、「このままだと虐待しそうだ」という「虐待予備軍」からの相談も少なくないという。「表面化していないケースを拾い上げることに加え、虐待を受けた子のケアを十分できるよう、市町村との連携を密にしたい」と話している。 (2006.11.11)
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