広島県や市の児相 対応不十分の声も 広島の2児死亡後も続く悲劇 いたいけな兄と妹の命を奪った広島市の二幼児虐待死事件で広島地裁は三十一日、鷹尾健一被告(34)の「未必の殺意」を認め、無期懲役の判決を言い渡した。事件後、児童虐待防止法は改正され「虐待のおそれがある場合」にまで通報義務を広げられた。が、全国、そして県内でもなお悲劇が続く。子どものSOSをいかに早くキャッチするか、関係機関の連携強化が課題となる。(野田華奈子) 鷹尾被告による室内での執拗(しつよう)な虐待を、裁判長が淡々と読み上げる。極度に衰弱した兄の慶樹ちゃん=当時(6)=はポリ袋に入れられ、さらにスポーツバッグに密閉されながら、「ごめんなさい」と何度も助けを求めた。その叫びを無視し、バッグを放置した行為を、裁判長は「殺人の実行行為」と断定した。 しかし、二人の死後も悲劇は続いた。 今年四月、広島市西区で無職の男が同居する女性の長男(4)を虐待したとして逮捕された。長男は意識が戻ることなく、五月に息絶えた。 児童相談所は関係機関から「ほおにあざがある」との連絡を受けていた。相談員が自宅も訪ねていたが、命は救えなかった。 県こども家庭支援室によると、二〇〇五年度に県と広島市の児童相談所に寄せられた虐待の相談件数は千二百三十件。五年前の約三倍に急増している。〇五年度からは政令市を除く市や町も虐待相談を受け付けているため、「実際はさらに件数が増える見通し」(同支援室)という。 子育ての悩みを電話で受け付ける「子ども虐待ホットライン広島」事務局長の中田憲悟弁護士は「法律の整備で通告は増えたが、現場の対応が追い付いていない実態がある」と指摘。「虐待は急にエスカレートするケースが多い。各機関や部署同士での情報交換を密にし、対応のノウハウを磨いていくことが大切」と強調している。
(2006.11.1)
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