中国新聞


子どもの安全 こう守る
広島でシンポ 3氏が報告


 「子どもの安全・安心」をテーマにしたシンポジウムが、広島市内で二十五日開かれた。厚生労働省などが主催した子育て支援者指導者研修の一環。不審者情報連絡システムを無償提供する中区の特定非営利活動法人(NPO法人)「NPOフレンズ」理事の藤原真也さん(53)や、佐伯区で防犯パトロールを続ける「イエローレモン隊」隊長の橋本英樹さん(47)、東区の牛田新町おやじの会世話人の重富寛さん(43)の三人が活動を報告、安心につながる地域の温かなきずなをどうはぐくむか意見を交わした。(平井敦子)

不審者情報  NPOフレンズ理事 藤原真也さん
常に携帯メール活用を

藤原真也さん

 不審者情報などを携帯メールで一斉に送信できる緊急連絡網のシステムを今、広島、山口両県の小中学校や子ども会など約七十団体に無償で提供している。もともと、さまざまな地域の活動を支援するツールとして開発したが、子どもが巻き込まれる犯罪が多発し、「子どもを守る」視点からの活用が多くなった。

 普段からさまざまな連絡事項で、携帯メールを活用してもらえば、不審者情報を発信した時も、きちんと伝わるようだ。

 見守り活動をしている団体は、資金の工面が大変なケースが多い。このため、缶ジュースなどの自動販売機の売り上げの一部を活動に利用してもらう「地域支援型自動販売機」の導入も始めた。広島市内には四台ある。新たなツールも活用して、子どもを守る活動を充実させてほしい。

防犯パト  「イエローレモン隊」隊長 橋本英樹さん
お互いの顔が分かる関係に

橋本英樹さん

 イエローレモン隊の隊員は今、四百六十一人。朝、昼(下校時)、夜と愛犬の散歩のわんわんパトロールに分かれて、子どもを見守る。

 見知らぬ人からのあいさつは無視するのが現実の中、隊員は、写真付きの名札を着用。「名札があれば、子どもとあいさつできる」というお年寄りの参加も増えているが、ゆくゆくは、互いの顔が分かるようになり、名札無しであいさつできる関係ができるといい。

 凶悪事件が相次いでいるが、登下校の送り迎えはしたくなかった。子どもにとって下校時の寄り道などは楽しみ。「監視」しちゃいかん、と思ったからだ。地域全体で子どもたちを見る目を養うのが大切。子どもの顔を見たら、父母、祖父母の顔が目に浮かぶ―。それが一番の防犯じゃないか。

父親参加  牛田新町おやじの会世話人 重富寛さん
「地域デビュー」促そう

重富寛さん

 地域での温かいつながりが、防犯になると思う。しかし、子どもの下校時の見守りに出てこない父母に、「子どもの命と会社、どっちが大切なん?」との声が出るのが現実。でも、それは親にとってはつらい。

 今の親たちは、核家族での「ガチンコ孤育て」に格闘している。夜遅く帰宅し、休日は郊外に子どもを遊びに連れて行く―という父親は、母親以上に、地域とのつながりはできにくい。私自身も、PTA役員を引き受ける三年前までは、そんな父親だった。

 父親たちを地域にどう引っ張り出すかを考えてほしい。おやじの会では、学校での紙飛行機競争を企画した。紙飛行機なら、どんな父親でもできるし、子どもと楽しめる。そんなイベントが、地域デビューのきっかけになれば、うれしい。

(2006.10.30)


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