中国新聞


全小中生対象 いじめ調査
広島県熊野町教委 虐待含む14項目


 北海道滝川市の小学生と福岡県筑前町の中学生がいじめを苦に自殺した問題を受け、広島県熊野町教委は、町内の小中学生全員を対象に、いじめや、保護者による虐待がないかを尋ねる独自のアンケートを始めた。問題が発覚していない段階で町教委が調査に乗り出すのは極めて異例。素早い状況把握が、対策への第一歩と判断して踏み切った。(久保田剛)

 同町には四つの小学校と二つの中学校があり、児童・生徒は計二千二百八十二人。アンケートは、全員に「友だちからいやなことを言われたり、いじめられることがありますか」など十四項目を質問する。いじめに限定はしていないが、教員がいじめに荷担していた筑前町の例を教訓に、友人や担任、校長に「お願い」や「してほしくないこと」などを自由に記述する欄も設けた。

 悩みを打ち明けやすいよう、記名は任意で学校に行きたくない理由や、「家の人に、たたかれることがありますか」など不登校や保護者らによる虐待を聞く設問もある。

 調査結果は十一月十七日までに各学校が集計して町教委に報告する。校長会などで結果を共有するほか、いじめや虐待と思われる事実があれば、早急に対策に乗り出す。

 いじめに関する調査は文部科学省が毎年、各学校が各市町村教委に報告するデータを基に集約している。しかし、いじめと認定するかどうかが恣意(しい)的で、実態を反映していないとの指摘もあり、調査方法の見直しを進めている。

 文科省生徒指導室は「問題発覚前に教委が調査に乗り出すケースは聞いたことがないが、事前に子どもたちのシグナルをつかもうという点で評価できる」としている。

 熊野町の西原忠徳教育長は「自殺や虐待で子どもの命が奪われてからでは遅い。結果を恐れずに子どもの率直な声を引き出し、対応することが必要だと判断した」と話している。

(2006.10.24)


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