モデル校着工 課題残す 他の4中校区 連携に不安
府中市教委が二〇〇八年度から導入する小中一貫教育が、具体的な姿を見せ始めた。モデル校となる小中一体型の「府中学園」は十九日、着工する。九年間を通した市独自のカリキュラムは五教科分を仮作成し、各校で試行に入った。市と市教委の主導で環境整備が着々と進むが、現場にはなお多くの課題が残る。(武河隆司) 十二日、上下南小で開かれた市小中一貫教育検討会議。小六の英語活動を公開した。市教委は六月、英語や国語など五教科のカリキュラム作成に着手。従来、小学校の英語活動は各校が独自に進め、時間数や内容はまちまちだった。仮作成したカリキュラムでは、年間活動時間を小学一、二年十八時間、三―六年三十五時間に設定。「数で遊ぼう」「誕生日はいつ」など、単元ごとの内容も示している。 「小学で学んだ内容を中学が把握できれば、九年間を通した効果的な授業が可能になる」と市教委の池田哲哉教育推進課長。カリキュラムは年度内に完成させる予定だ。 府中市の小中一貫教育は市内の全小、中学校を対象とする。五つの中学校が中心となり、校区内の小学校と連携を進める。新設の府中学園は中学一校と小学四校を統合した小中一体校。他の四中学校区は小、中学校の距離が離れたまま一貫教育を実践する。 中学教員が小学校に出向くか、テレビ会議システムを使って小中合同授業を展開するなど、離れた学校は試行錯誤を重ねる。「会議の時間を確保するのもやっと。一体校と同様の一貫教育ができるのか」と小学校男性教員は漏らす。 市教委は「教員が九年間を見通した視点で授業をすれば、距離は克服できる」と強調する。が、「一貫教育ありき」と受け止める市議や市民も、まだ少なくない。 検討会議委員長で広島大大学院教育学研究科の池野範男教授は、十二日の会議をこう締めくくった。「一貫教育の目標は、子どもたちが確かな学力をつけ、豊かに成長すること。もう一度、原点を振り返ってほしい。市民の理解を深めるためにも、成果を形として示さねばならない」 市が一貫教育の構想を公表して三年。一年半後の導入に向けモデル校の校舎着工を迎えた今、「中身」と「成果」が問われ始めた。 (2006.10.19)
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