日本協会広島県支部の父親部 酒を飲み情報交換 ■仕事生かし就労支援試み 父親の育児参加をどう進めるか―。自閉症の人や保護者らでつくる日本自閉症協会広島県支部は今年四月、「父親部」を設けた。現在、約三十人の父親たちが、自閉症児の育児にどう力を発揮するか、模索を続けている。酒を飲みながら情報交換する場を設けたり、仕事のネットワークを生かした就労支援を試みたり。父親がかかわりやすい仕掛けづくりは、自閉症児の父親以外にも参考になりそうだ。(平井敦子)
土曜日の午後六時半、JR広島駅近くの居酒屋。三十〜六十歳代の男性六人が集まった。自閉症の子どもがいる父親たちだ。まずは、ビールで乾杯! 父親部代表の医師上野正さん(46)は「やっぱりお酒がないと、話が進みませんよね」と笑って話を切り出す。和やかな情報交換が始まった。 母親に育児を任せようとする傾向は自閉症児の親たちにも共通するようだ。自閉症児はコミュニケーションが苦手だったり、やたらと走り回る「多動」の行動があったりして、子どもの世話のために母親が専業主婦の道を選ばざるを得なくなるケースも少なくない。そうして父は仕事、母は育児と家事―という役割分担が進み、自閉症協会の活動も母親中心となって…。 そんな中、自閉症の十歳の息子がいる上野さんは「仕事中心となってしまう父親が、どうしたら自閉症児のサポートができるか」と頭をひねり、まず酒を飲みながら本音で話す男性だけの会「MAN会」を、昨年七月に立ち上げた。 MAN会では、参加者が子どもの近況報告をしながら、ざっくばらんに語らう。子どもに対する互いの支援の方法を教え合ったり、自閉症児を取り巻く制度の問題点を話し合う。自閉症の小学二年の息子がいる会社員山道敏朗さん(44)は「妻とのかかわり方など、立場が同じ父親同士だからこそ、弾む会話もある」と笑う。年に三、四回開く集まりでは時間を忘れて話し込むことも。互いに気心が知れ渡るようになり、父親部設置の声が上がった。 では、「飲み会」での情報交換以外に何をするか―。会社員小野塚剛さん(45)は父親部内に「障がい児の就労を考えるネットワーク」を立ち上げている。「働く父親は人員削減などに必死な会社側の事情も分かる。仕事で培った経験や人脈を生かし、就労の交渉に当たれるのではないか」。県内の大手企業への訪問などを開始し、他メンバーにも参加を呼び掛けている。 父親に参加しやすい日程、テーマでの勉強会も企画した。十一月十八日午後五時半から、広島市東区の市心身障害者福祉センターでの「父親のための自閉症基礎講座」。母親から間接的に知識を得るのではなく、直接自分たちで学ぼう、という訳だ。上野さんは張り切っている。「それぞれの社会的立場や仕事や特技を活用し、父親が子どもたちの生活向上に役立てれば。これからです」。上野さんTel082(847)1679。
(2006.10.2)
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