広島の可部高生、パネル討論 ■友人かばう時は肯定多数 友だちにうそをつくのはいけないが、友だちをかばうために先生にうそをつくのは仕方ない―。広島市安佐北区の可部高がこのほど中区の広島国際会議場で「嘘(うそ)について考える」パネルディスカッションをした。親や教師に隠し事をしたり、食品の不正表示などの事例を討論。事実をごまかすと自分に不利になるとは知りつつも、仲間を傷つけたくない高校生の本音が浮かび上がった。(串信考) 同高は今年、文科省の道徳教育推進事業のモデル校に選ばれ、広島大の越智貢教授の指導で討論を計画。演劇部が四つ事例を演じ、約八百人の生徒が、賛成するときは青、否定する場合は赤のカードを表示した。 海上保安大の上村崇講師(哲学)が司会者を務めて一年伊藤卓志君(15)、二年福田将君(16)、三年竹原里奈さん(17)と国武紀子教諭、河原正幸教諭の五人が討議した。
先生の思いとずれ 先生についたうその事例は、校則に違反してバイク乗車の友人を見かけたのに、生徒指導の先生には「見ていない」―。 このうそを肯定する青のカードが過半数。会場の生徒に教師が理由を聞くと、「友だちがかわいそうだから」と答えた。 国武教諭は「学校は生徒の安全のためにバイク禁止を決めているのを分かってほしい」と理解を求めた。パネリストの生徒は「それでも見たとは言えない」。別の生徒の中には「親しい友だちならかばうけど、そうでなかったら本当のことを言っちゃうかも」という意見もあった。 恋愛の打ち明け話 次の事例は、親友から既に彼女がいる男子生徒への恋心を打ち明けられて、正直に話して傷つけることを恐れ「彼女はいない」とうそをつく。 このうそはいけないという赤が圧倒的で、先生への事例とは対照的。会場の生徒は「本当のことを言った方が相手のためになる」。一方、数少ない青の生徒は「彼女がいることを知ったら恋愛をあきらめてしまう」。 パネリストも全員が否定。河原教諭は「真実を知られたら親友は『だまされた』と思うのでは」。生徒も「本人から知らされるより、友だちから言われた方が傷つかない」と、早く知った方が良いとの意見だった。 家族関係に配慮も 塾をサボって友だちとカラオケで遊び、母親に「塾にちゃんと行った」とうそをついた事例は、赤と青がほぼ半々。赤を上げた生徒は「ばれたらたいへん」、青の生徒は「本当のことを言うと家族関係がまずくなる」。 最後の事例は、賞味期限切れの食品を偽って出荷する食品工場の従業員が、消費者に問いつめられ、「期限は切れていない」と言ったうそ。いけないとする赤のカードがほとんどを占めた。 会場やパネリストの生徒の中には「クビになるのが怖かったら、仕方のない時もあるのでは」という意見もあったが、国武教諭は「偽って売る事態になる前に上司や周りの従業員と話して解決するべきだ」と強調した。 越智教授は「うそをつくことは、相手だけでなく自分自身も裏切ることになる。小さなことでも人と議論し、自分の頭でよく考えて判断してほしい」と総括していた。 (2006.9.9)
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