電話相談「チャイルドラインびんご」 ■友人・異性問題や家庭内暴力 …聞き役に徹し自立支援 十八歳以下の子どもの相談を、専用電話で受ける福山市の「チャイルドラインびんご」。市民団体「子どもサポネット・ハートフル」(小林万里子代表)が月四回、開設する。この二年近くでかかってきた電話は千件を超えた。受話器の向こうからSOSを発信する子どもたちの心の奥底は…。夏休みの一日、相談の現場を訪ねた。(赤江裕紀)
福山市内にある「チャイルドラインびんご」の事務所で、電話のベルが響いた。午後二時五十七分。相談ボランティアが受話器を取ることができるのは、開始時間として公表している午後三時から。ベルは三分間鳴り続け、つながった。 「友だちとの人間関係で悩んでいるのですが―」。女子高生が思い詰めたような口調で切り出した。相談相手になっているのは五十歳代の会社員女性。まずは話をじっくり聞く。「気持ち分かるよ」「友だちに良いところもあるよね」。含み込み、語りかける。 4時間で21件 しばらくすると会話が和んだ。「実は夢があるんです」。女子高生は将来への希望を吐露し始め、何度もお礼を言って電話を切った。三十分が過ぎていた。「周りの人の長所に気づき、前向きになってくれたみたい」。応対した女性がほっとした表情を浮かべた。 この日、四時間の相談時間中のコールは二十一件。「友達にいたずらされた」「先生にほめられた」「夜、眠れない」…。悩みに、報告や喜びも交じる。受け手はあくまで聞き役に徹し、解決策は子どもに任せるのが原則だ。 無言電話。その多さもチャイルドラインの特徴だ。二十一件のほぼ半数に上った。いたずらとは思えない。受話器を触る音やテレビの音声など、子どものかすかな気配が伝わってくる。「何でも話していいのよ」「待ってるからね」。そう呼び掛けるボランティアが、先に受話器を置くことはない。 異性問題、家庭内暴力、先生への不満…。「子どもたちは、家族や学校など周囲の大人が受け止めきれていない思いを抱えている」。ボランティアの一人は、そう実感している。 「頼れる大人」 全国で今、六十三団体が同様のチャイルドラインを運営。子どもの「自立支援の場」として広がりを見せる。県内では、特定非営利活動法人(NPO法人)の「ひろしまチャイルドライン子どもステーション」(広島市西区)も二〇〇〇年三月から、専用電話を開いている。 子どもの主張を聞くだけでは、甘やかすことになる―。チャイルドラインをめぐっては、こうした大人の意見がある。電話をしてきた子どもたちすべてが、問題解決の糸口や自立への道筋を見いだせるわけではない。 が、小林代表は言う。「身近な大人とのつながりを持てず、『心の居場所』を求めて子どもたちは電話をしてくる。今一番必要なのは、子どもの心を聞く、信頼される大人の存在ではないのか」。開設時間中、鳴りやまないコールが、その言葉を裏付けていた。
(2006.8.29)
|