広島市の子育て環境は? 乳児保育 受け入れ進む/定員増やし待機率改善 ■「延長」「休日」 充実が課題 広島市が乳幼児についての子育て環境を全国の政令指定都市など十五都市と比較して調べたところ、保育の対策は進んでいて保育所への入所を待っている子どもも少ないが、保護者のニーズが高い延長保育や休日保育の対策は遅れているという結果が出た。市は民間企業の力も借りて課題を克服する計画を描くが、市民からは「企業の論理が優先するようなことがないようにしてほしい」との要望も出ている。(伊東雅之)
東京都と、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡など十四の政令市と交換した昨年四月時点のデータを調べた。生後五十七日目から認められている乳児保育を実施しているのは、広島市の認可保育所百五十二カ所のうち百三十一施設。率では十五都市中トップの86・2%で、二位の静岡市とは16・8ポイントの開きがある。 広島市で乳児保育が広がったのは戦後間もなく。原爆の被害を受けた街の復興作業に追われる保護者から要望が高まったためといわれる。市はゼロ歳児を二十人以上受け入れている保育所に保育士を雇うのにかかる費用を助成。実施しやすい環境を整えてきた。 保育所への入所を待つ乳幼児(待機児童)は百四十三人で、全入所希望者の0・8%。静岡、北九州市に次いで低い。 広島市の待機率は、五年前の二〇〇一年度でも2・7%と決して自慢できるレベルでなかった。改善するため、〇二年度から三年間で、入所定員を千七百人拡大する事業に着手。保育所の新築や増築、保育士の雇用などに助成し、待機率の縮小を実現してきた。 割引率37・3% また、保護者の経済的な負担を減らすために各自治体が取り組む保育料の割引も、広島市は二位に食い込んでいる。各自治体の保育料は国の基準に沿って決められ、割引分は自治体が肩代わりしている。割引率は今年四月現在、広島市は37・3%で、40・0%の名古屋市に次いで高い。 こうした保育環境について市は、全国でも高い主婦の就業率につながっているとみる。六歳未満の子を持つ核家族世帯で仕事に就いている主婦の率は〇二年、広島市が34・2%で、東京都を加えた当時の政令市の中でトップだった。市児童福祉課の榎伸男課長は「子育てしながら働ける環境が整ってきている裏づけ」と話す。 利用者の側からも市の取り組みに一定の評価は聞かれる。広島市の市民グループ「豊かな保育をすすめる会」の河本憲宏会長(42)もその一人だが、「待機児童問題では、人口が増えている地域で待機児童が際立って多く、早急な対策が必要」と課題を指摘。「働く女性が増えている以上、ニーズが高まる延長・休日保育の充実にも目を向けてほしい」と求める。実際、広島市が保護者に調査しても休日、延長保育へのニーズが高い。 しかし、広島市で延長保育を実施している施設は九十五カ所(〇五年四月現在)。率では62・5%で十五都市中十一位。休日保育を実施している施設は市内にまだない。 新計画も実施 全保育所の定員をさらに約二千百人増やして二万千二百人に、延長保育は八カ所増の百三カ所にする。休日保育も八カ所で始める―。市は〇九年度までに実現する新計画を掲げ、昨年度から実施に移している。 だが、市が期待を掛ける民間企業の保育所運営の参入に河本会長は不安を持つ。「効率性など企業の論理が優先するようなことがないよう十分配慮してほしい」と求める。 (2006.8.21)
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