05年度厚労省集計 広島・島根は減少 二〇〇五年度に全国の児童相談所が児童虐待に対応した件数は、三万四千四百五十一件(前年度からの繰り越し分を含む)で、過去最高だった前年度(三万三千四百八件)を千件以上、上回ったことが二十九日、厚生労働省の集計(速報値)で分かった。 相談を新規に受理した件数は三万四千二百九十七件と、前年度より三百五十五件減。昨年四月の改正児童福祉法施行で、相談窓口が市町村に広がり、軽微なケースなどは自治体レベルで対応できた効果とみられる。 対応件数は、集計を始めた一九九〇年度から連続して増加。厚労省は「虐待に対する住民の理解が進み、通告の増加につながった」とみている。 自治体別にみると、山口、岡山県など二十六都道府県と九政令市で増加、広島、島根県など十九府県と広島市など四政令市で減少した。増加率では高知県一・八〇倍、秋田県一・六四倍、北九州市一・四二倍が上位で、山口県は一・一一倍。減少したのは島根県が〇・五五倍、山形県〇・五八倍、佐賀県が〇・六七倍。広島県は〇・九七倍、広島市は〇・七九倍だった。 児童相談所で相談や調査に当たる児童福祉司は今年四月一日現在、全国で二千百四十六人、心のケアなどをする児童心理司は九百四十一人で、いずれも増加。児童福祉司は五万―八万人に一人の割合で配置するが、佐賀県と福岡市では基準に達していなかった。 自治体窓口 地域格差も 比較的軽い児童虐待について、昨年四月から相談業務を受け持つようになった全国の市町村。地域のネットワークづくりを進めるなど、意欲的な自治体ほど児童相談所に回る件数が減少している傾向にあるが、地域格差も大きいのが実情だ。 応対する担当者について厚生労働省は、児童福祉司と同等の専門性がある職員を相談窓口に配置するのが望ましいとしている。しかし実際には一般行政職が最多。関係機関による「地域協議会」の設置もあまり進んでおらず、中には相談を受けても「ほとんど児童相談所任せ」という自治体もみられるという。 都道府県の役割も重要だ。大阪府では市や町にソーシャルワーカーを派遣してバックアップ。府の児童相談所の受理件数は、前年度に比べ七百四十五件減と大幅に減った。 日本子ども家庭総合研究所の才村純・ソーシャルワーク研究担当部長は「ノウハウがない自治体では、立ち入り調査や子どもの一時保護などに関する判断が甘くなる場合がある。当面は相談を受けたら原則、児童相談所と協議して対応を決めるのが望ましい」と指摘している。 (2006.6.30)
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