自転車の補助いす用 自治体も普及に力 自転車の補助いすに乗った子どもに、ヘルメットを着用させる動きが広まっている。安全意識の高まりに加え、デザインがおしゃれになったのも要因だ。とはいえ、全国の着用率は2%台、広島県交通対策協議会は7月の夏の交通安全運動で初めて着用を呼び掛ける。(下久保聖司)
「大事故にならなくてよかった」と、広島市中区の主婦(33)は振り返る。五年前、スーパーの駐輪場。目を離したすきに自転車が転倒、補助いすに座る当時一歳の長女が地面で頭を強打した。けがはなかったが、主婦は「頭は打ちどころが悪いと大ごとだ」と、ヘルメットを買った。 各都道府県の道交法施行細則ではおおむね、自転車は運転者が十六歳以上なら六歳未満の幼児を一人乗せていいが、ヘルメット着用の義務はない。 1年で44人負傷 広島県警交通企画課によると、自転車同乗中の六歳未満児の負傷者は、二〇〇五年に重傷者一人を含む四十四人。半数の二十二人が頭にけがした。最近五年の平均は四十五人だが、軽傷は届けない人が多く、実際の負傷者は数倍とみられる。〇五年の全国の死傷者は二千百三十人で十年前の約二倍だ。 全日本交通安全協会(東京都)の調査では、けがの部位で足に次いで多いのは頭で17・7%。ヘルメット着用で衝撃が半分近くに軽減するとの実験データがあり、同交通企画課の渡部健之介次席(52)は「運転者は転倒前に受け身や心の準備ができるが、補助いすの子どもは無防備。できればヘルメットを」と勧める。
広島市内に八店舗を展開する自転車販売「カナガキ」。西区の本店では昨年からニーズが増え、多い日に十数個売れる。「種類が多く、親子連れで楽しそうに選んでおられます」と担当の田平真さん(27)。競技用と同じく流線形フォームで、三百グラム前後と軽い。頭が蒸れないように通気孔が開いている。アニメのキャラクターが描かれ、赤や青などカラフル。三千円前後が売れ筋だという。 しかし、全日本交通安全協会の調査では95%以上が未着用。岡山県交通安全協会は今年初めて、県内の二十二警察署にヘルメットを一個ずつ配り、幼児向けの交通安全教室で着用を呼び掛けるよう求めた。本年度の同協会の重点項目にも着用推進を掲げた。 安全運動で推進 自治体が普及に乗り出すケースも。大阪府は昨秋、業界団体が提供した約一千個を幼稚園などに配った。東京都台東区は着用モニターを募り、名古屋市は交通安全教室で保護者に呼び掛ける。 海外では米国オレゴン州や英国ダーラム市が条例などで着用を義務付けるが、日本では慎重論が少なくない。大阪府や東京都墨田区の着用者アンケートで「成長に伴う買い替えの経済負担が大きい」「夏は子どもが暑がる」との指摘があった。 着用推進を初めて掲げる広島県の夏の交通安全運動は七月十一日から二十日まで。 ■購入・使用のポイント −試着してサイズ確認を カナガキ・田平真さんの話 必ず試着してください。商品にある対象年齢はあくまで目安。アニメキャラクターなどの絵柄やデザインばかりで選ばず、自分の頭にフィットするかどうか確かめてください。あごひもは苦しくない程度にきっちり締めて。ヘルメットを前後左右に動かし、ずれないか確認を。ヘルメットをかぶってから補助いすに乗ってください。2人以上は乗せないように。 (2006.6.26)
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