目標達成企画 最終年度 小学生の夢を、地域や学校ぐるみで2年間かけて実現を目指す青少年育成広島県民会議(広島市中区、上田宗冏(そうけい)会長)の「夢配達人プロジェクト推進事業」が最終年度に入り、見直しの時期を迎えた。専門家の指導を仰ぎながら目標を達成する事業は、県外からも注目を集める。子どもの「夢」をキーワードに事業をどう発展させるか。関係者の企画力が試されそうだ。(村田拓也) ■「一炊」で終わらぬ工夫を
「あそこの土の色が違う」「どんな物が出てくるんだろう」。発掘調査が進む広島市中区の広島城跡。廿日市市の地御前小六年生約六十人が五月中旬、訪れた。地元の地御前南町遺跡を十一月に発掘調査する夢を実現するための参考にした。 児童に満足感 広島市文化財団文化財課指導主事の松原啓さん(42)から調査の概要を聞き質問もした。これまでに出土したのは井戸跡や陶磁器、瓦、人形…。「いろんな物が出てきて面白かった」と百々幸秀君(11)。松原さんは「自分で歴史を発見できるチャンス。貴重な体験になる」と古里の遺跡調査をしようとする児童に温かく接した。 みんなで思い出をつくろうと五年生だった二〇〇五年度に応募し、採用された。正木秀明教諭(39)は「発掘の依頼など、自分たちですべて準備するのは大変。ただ多くの人に支えられ、子どもはうれしそう」と笑顔を見せる。指導役は廿日市市教委の職員が務め、地元の歴史など事前学習を進めている。 プロジェクトは〇四〜〇六年度の三年間のモデル事業としてスタートした。子どもたちが、夢の実現を応援してくれる地域の大人と実行委員会を設立。技術指導や助言してくれる専門家を「夢配達人」に選び、二年間で実現を目指す。県民会議は一件につき五十万円を上限に支援する。 「努力は実る」 初年度は千三百七十一件、〇五年度は千二百二十四件の応募があり、各八件を採択。いずれも個性的な夢がそろった。 県民会議の山元利成理事(70)は「子どもには努力すれば夢は実現すると実感してもらう。併せて地域のコミュニティーを再生する狙いもあった」と振り返る。難しさに逃げ腰だった大人が、活動を重ねるにつれ本気になる。そんな姿に手応えを感じる。 事業期間を終えながら運動を継続する動きも出てきた。〇五年度まで、地元の八幡川をきれいにする環境保全に取り組んだ広島市佐伯区の五日市南小。本年度も保護者や地元の社会福祉協議会の支援で活動を続ける。 四年生約百人が総合学習を活用し、生物観察や清掃活動に取り組む。和田克彦校長(52)は「地域と協力して事業を進めた経験は貴重な財産。良さを引き継ぎ、子どもに貴重な経験を積ませていきたい」と思い描く。 県民会議は今後、費用の大半を補助する県と共同で、来年度に実施する新たな事業の検討を本格化させる。活動方針や事業計画を審議する運営委員会が、県青少年・地域安全室と連携。秋をめどに方向性をまとめる方針だ。 小学生から夢を公募するプロジェクトは、全国でも珍しい。愛知県大府市の青年会議所が参考にするなど評価も高い。山元理事は「せっかくできた地域を巻き込む仕組みを、どう発展させるか。いいアイデアを出したい」と意欲をみせる。
(2006.6.20)
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