中国新聞


大変 育児ストレス
パパ記者の育休2週間体験記


 ■苦手な料理に長女の赤ちゃん返り…いら立つ 妻への理解深めた日々

 妻が二女を出産したのに伴い、5月2日から15日までの2週間、育児休業を取った。産後で体調が十分でない妻が赤ん坊の世話に専念できるよう、家事と長女の世話を担当。主夫$カ活で痛感したのは育児ストレスの大きさだ。わずかな期間でも男性が育休を取り、パートナーへの理解を深めることの必要性を実感した。(酒井亨)

 育休の朝は長女(4)が保育園で食べるおにぎり作りから始まる。朝食後、自転車で長女を保育園に。帰って洗濯と掃除。昼食はコンビニのお弁当などで済ませた。

気づけば夕方

 赤ん坊を風呂に入れたり洗濯物を片付けたりしているうちに気が付けば夕方。スーパーに走り、夕食を作って後片付け。お迎え時間ぎりぎりに保育園に滑り込み、長女を風呂に入れ、絵本を読み聞かせて就寝―。これが標準的な一日だ。

 苦手な料理には骨が折れた。長女の「赤ちゃん返り」にも悩まされた。忙しい時に限ってわがままを言ったり、言うことを聞いてくれなかったり。いら立って長女を怒鳴る私を見て、妻があきれ顔で言った。「育児ノイローゼじゃないの」

 もしこれが一人だったらと想像してみた。一日中家で物が言えず泣くだけの子どもと向き合い、合間に家事をこなし、外出は保育園とスーパーのみ。しかし、それが「当たり前」と思われ、ねぎらいの言葉もない―。

 妻は職場の同僚でもあり、中国新聞のホームページに「ハハ記者☆じゃーなる〜『ぶんぶんの育休日記』」と題して、ブログ(ネット上の日記)を連載中だ。そこに私が育休中の体験を書き、「育児の苦労を分かってくれるのは“妻”しかいないはずなのに…」と愚痴をつづったら、専業主婦から多数の反響があった。

 「仕事をしていたら息抜きの時間もあるけれど主婦にはそれすらない」「夫が苦労を分かってくれたら妻も頑張れるのに」「専業主婦の家庭でも、一週間でもいいからパパが育休を取るのが当たり前になってほしい」。女性たちの訴えが身にしみた。

幸せ感じる時

 苦労した二週間だが、振り返ると、ふとした瞬間にささやかな幸せをかみしめることができた日々だった。保育園に迎えに行くと走って胸に飛び込んでくる長女を抱きしめた時、安心しきってぐっすり眠っている二女を抱っこした時…。

 育休を取る決意をした理由は二つあった。一つは、夫婦双方の実家が「高齢者介護」を抱え、手助けを頼める状況になかったこと。もう一つは長女が生まれた時にほとんど協力できず、妻が軽度の「産後うつ」になったのにさえ気付かなかった反省からだ。

 七年前、男性社員が五カ月間の育休を取った先例はあった。だが、同僚へのしわ寄せや、「『仕事をおろそかにしている』と思われるのでは」と考えると上司に切り出すのは気が重かった。それは杞憂(きゆう)だった。育休申請は受理された。同僚は「二週間といわず、一カ月くらい取ったら」と温かい言葉を掛けてくれた。やはり、職場環境が男性の育休取得を大きく左右する、と実感した。


 <メモ>育児・介護休業法によると、夫は妻の産後八週間まで育休を取得できる。専業主婦の夫でも可能。休業中は雇用保険制度で休業前賃金の40%の所得保障がある。国は次世代育成支援対策推進法で育休を取得しやすい環境づくりを企業に求めているが、二〇〇四年度の男性の取得率は0・56%。

(2006.6.12)


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