託児室付きのヘアサロンが人気だ。身だしなみにかけるちょっとの時間、安心して子どもを預けられたら―。小さな空間が、子育て中のお母さんやお父さんたちの願いをかなえている。(森田裕美) ■癒やしの時 憂いなし
広島市中区の美容室「シャーマンヘアプラス」。カットやカラーリング(髪染め)中の女性客の背後を抜けて進むと三畳ほどの託児コーナーと五席分の美容スペースがあった。今年三月に店内を改装する際、二つの部屋の奥の方を親子連れ客向けにした。 託児コーナーは、母親の席からは見通せ、子連れでない客の気には障らないように仕切った。髪を染めに来ていた主婦前田美樹さん(27)=西区=は「ここなら子どもが見えるから安心」とスタッフと遊ぶ長女(1)に目をやる。「娘を家に置いたまま出られないし、短時間だけ預ける所もなくて髪が伸び放題だった」と打ち明ける。 「高まるニーズ」 浜原達也店長(39)が店を開いて四年。客層には二、三十代の女性が多く、「固定客が結婚し、出産していく流れの中で、自然に託児のニーズも高まった」と言う。毎週日曜は子連れの若い夫婦客が多く、子育て中の友だちと誘い合わせて来る女性客も増えた。 女性客が30倍に
明治創業の老舗、下関市の理容院「癒しの床屋AKAHORI」は、男性用理容いすの奥に一畳半ほどの「キッズルーム」を設けている。隠れ家風の部屋に絵本やビデオなどが並ぶ。 昨年四月、移転リニューアルを機に子連れ客向けに考えた。顔そりに来る女性客や祖父母などと家族そろって訪れる客に好評で、女性の来店者数が移転前の三十倍以上に増えた。 「キッズルーム」は、静かに顔そりなどをしなければいけない女性用スペースからは離し、男性側に設けて父親や祖父が散髪しながら声を掛けられるようにした。 「父親でもある自分自身、たばこを吸う客も多い従来の待合コーナーで子どもを待たせたくないな、と思ったからスペースを取った」と経営者の赤堀茂さん(38)。 室内には、小学五年の長女(10)が読んでいた本や学校で作ったおもちゃも並ぶ。妻で理容師のゆみさん(38)も育児中は子どもを預けられず、買い物や髪の手入れに行くのを我慢していた、と言う。「子育て中のお母さんたちに少しの時間でもリラックスしてほしい」と願う。 約九万店が加盟する全日本美容業生活衛生同業組合連合会(東京都渋谷区)は「利用客のニーズに敏感な経営者を先頭に増え始めているのでは」とみている。 広島市中区に美容院二店を出す「クレオヘアインターナショナル」は五年前から、中区舟入南の住宅街の店舗に無料託児室を併設し、保育士や育児経験者を常駐させている。インターネットで見つけ、子連れで車に乗って訪れる女性客も多いという。クミ・リップマン社長(44)は「女性が安心して癒やされる時間を提供したい」と話している。 (2006.6.5)
|