岩国の「つづみ塾」 無料補習教室 ■熱心な指導 生徒に意欲 学力に不安がある生徒を地域ぐるみで支えようと、岩国市通津の通津中で、地元の元教師らが、補習教室「つづみ塾」(森山梭一塾長)を無料で開いている。熱心な指導で学力が上がり、子どもだけでなく、学校や保護者にも好評。国も来年度から、教員OBによる無料補習の実施方針を固めており、つづみ塾は先駆的な試みと言えそうだ。(田中美千子)
毎週火、木曜日の午後六時すぎ、部活動を終えた五人前後の生徒が図書室に集まる。授業は一回一講座で、約一時間。二年は数学、三年は英語、国語、数学がある。希望者が受講できる。 講師は、小中学校を定年退職した五人。交代で受け持ち、苦手な部分を集中的に教える。 元小学校教諭の呉田勝彦さん(69)は、三年の数学担当。生徒一人一人の学力に応じ、分数や方程式の計算など基礎から復習する。「分かりやすいし、何でも質問できる」「自宅より勉強がはかどる」―。生徒は意欲的に机に向かう。 呉田さんは「これまでの経験から一つの教室で、みんなが分かるように教えるのは難しい」とし「だからこそ、取り残されがちな生徒を手助けしたい」と強調。「問題が解け、生徒の顔がぱっと輝く時が最高です」。やりがいを感じている。 二〇〇四年十一月に開講した。同校育友会の前野弘明会長(53)が「補習教室を通して生徒の学力差が縮まり、不登校の防止にもつながる。家庭学習も習慣づけられる」と発案。講師を持ちかけられた森山塾長(71)らも「どの生徒も楽しく授業が受けられるよう、サポートしたい」と快諾した。 文部科学省は経済的理由で塾に通える子と、通えない子の学力差が広がるのを防ぐため、団塊の世代の元教員を活用した無料補習を計画している。通津中の郷孝義校長(59)は「つづみ塾は全国的にも先進例。基礎学力の向上もみられる」と感謝。前野会長も「経験豊かな講師との触れ合いを通し、人生勉強など学力以上の収穫もあると思う」と喜んでいる。「授業の中で話し合いを増やすなど各中学校の授業力向上に努め、思考力や表現力を養う指導に力を入れる」としている。 (2006.5.31)
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