無責任保護者に業煮やす ■三次も実施 広島は検討 小中学校の給食費滞納に苦慮する呉市は、経済的に支払い能力がありながら、長期間滞っている保護者に対し、法的手段を講じた徴収に踏み切った。広島県内の自治体でも滞納問題が深刻化し、未納者対策への動きが出始めた。(増田咲子) 「愛犬の美容代を惜しまず、新車を購入していた家庭もあった」「差し押さえが職場に知れると分かると、すぐ支払った」。滞納者を戸別訪問した呉市教委の担当職員は、保護者の無責任ぶりを嘆く。 簡裁に申し立て
呉市は一月から、就学援助と生活保護受給者を除く三カ月以上の滞納者を調査。把握した五十世帯のうち、学校側での対応が困難な十一世帯を職員が戸別訪問した。四月、再三の督促にも応じない保護者二人に対する支払い督促を呉簡裁へ申し立てた。滞納額は、合わせて十六万六千円だった。 呉市では、給食費の会計処理が学校ごとに異なる。保護者から納金を受けた後、(1)市学校給食協会にまとめ、業者に一括して支払う(2)各地域の学校給食共同調理場を経由して、業者に支払う(3)学校が直接、業者に支払う―の三パターン。 呉市教委の調査では、(1)は会計上の未払いが見当たらなかったが、実際は担任教諭や学校長による立て替えなどで補っていた。(2)と(3)は、食材の節約などで対応していたという。 学校は措置歓迎 学校側の督促に対し、「義務教育なので、支払う必要はないはず」「ローンがあり、給食費にまで回らない」と広言する保護者が増え、三年ほど前から市教委に対策を求めていた。市教委教育改革推進室は「子どもの学校生活より家庭生活を優先。払わずに済ませようという意識が広がっている」とみる。 中学校長(54)は「子どもが食べた代金は、保護者が当然支払うべき。教職員の立て替えも限界があり、教育活動にも支障が出る」と今回の措置を歓迎。小学校長(55)も「六年間ほとんど払わない保護者もいたが、教員が借金取りのような行動は取れない」と市の対策に期待を寄せる。 呉市以外の県内十三市の実態をみると、三次市でも昨年度、三人の子どもを持つ保護者に対し、三十七万八千円の支払い督促を三次簡裁に申し立て、給与を差し押さえた。 二〇〇四年度に集金から口座振り替えに徴収方法を変更した府中市。〇二年度は二十八万八千円、〇三年度は三十七万九千円だった滞納額が、〇四年度には二百九十万六千円と大幅に増えた。未納者に対する督促方法が不十分だったためで、啓発を強めるなど対策を講じている。 教育的に悪影響 広島市では、〇三年度までの累積滞納額が約七百万円に上る。細かい調査を進め、法的措置や徴収方法の見直しを含めて検討している。三原市や廿日市市などでも実態調査に乗り出す。 全国学校給食協会(東京都)代表で月刊誌「学校給食」の細井壮一編集長は、飽食の時代に育った保護者のモラル低下を一つの要因に挙げ、「給食制度の目的やありがたさを、もっと理解すべき。子どもが滞納に気付けば、教育的にも心理的にも悪影響を及ぼす」と警鐘を鳴らしている。
(2006.5.15)
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