大島・安下庄の2校案に反発の声 山口県周防大島町教育委員会は、離島を除く町内の中学八校を、二〇〇八年度をめどに、大島中と安下庄中の二校に統合する方針を固めた。過疎化の中、多人数教育で生徒の社会性を養うのと、校舎の改築が財政的に厳しいのが理由。学校がなくなる地域の保護者らからは「登下校の距離が長すぎる」など、反発の声が上がっている。(久保木要)
九校ある同町の中学校のうち、児童養護施設あけぼの寮に隣接する情島の情島中を除く八校が再編の対象。計画では、久賀、蒲野、沖浦中を大島中に、油田、東和、日良居中を安下庄中に統合する。生徒の登下校には、町営のスクールバスを走らせる。 「生徒の社会性養う」 八校の生徒数は一日現在計三百九十人。過疎、高齢化で、十年前に比べ約四割減った。全校が各学年一学級。四校の九学年が十人未満になっている。平田武教育長は「小規模校では、クラブや委員会活動も制約される。生徒の社会性を養ううえで、統合はやむを得ない」と説明する。
町教委が統合の検討を始めた昨春には、合併した旧四町に一校ずつ置く四校と、二校にする二案があった。昨年九月に、町教委が全中学の保護者を対象に実施したアンケートでは「四校案」支持が八割を超えていた。 一方で、東南海・南海地震の防災対策推進地域に指定されている町は昨年十二月、全中学の校舎の耐震調査を実施。その結果、大島、蒲野、安下庄中以外は「強い地震で倒壊の危険があり、改築か大規模な補修が必要」と診断された。特に、四校案で存続だった久賀と東和中は改築が必要で、町教委は、一校当たり少なくとも十二億円かかると試算。大島中と安下庄中二校への統合案の採用を決めた。保護者や住民への説明会を開き、理解を求めている。 学校がなくなる地域の反発は大きい。油田中の保護者は「統合は仕方ないが、安下庄中までは車で四十分以上かかり、子どもの負担は大きい。居住地域との交流も薄くなる」と心配する。久賀地区の住民は「久賀中の生徒数は町内で二番目に多く、なくなるのは納得がいかない。財政難のしわ寄せを生徒に押しつけてはならない。四校にするべきだ」と憤る。 小学校問題も控える 町教委が財政面から二校にこだわる背景には、中学校の統合後、町内に十四ある小学校の統合を控えているからだ。耐震調査では、七小学校の校舎が「改築か大規模な補修が必要」と診断されている。「中学校も小学校も改築するのは財政的にきついので、改築件数はなるべく抑えたい」。そんな本音も漏れてくる。 町教委は、今後も説明会を通して二校案で住民の理解を得る方針。ただ、平田教育長は「島の教育を考えた時、地域がとことん反対なのに、行政が突っ走るのはなじまない」とも話しており、なお曲折がありそうだ。 (2006.5.8)
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