中国新聞


育児したい でも難しい
パパの「理想と現実」は?
広島のグループ調査


 実行はさておき、育児参加の理想は高い―。そんな父親像が、広島市の育児支援グループ「子育ておたがいさま〜ズ実行委員会」(金子留里代表、三十五人)の調査から見えてきた。お父さんのせっかくの思いを生かすためにも、社会の後押しが必要だ。(森田裕美)  

希望は「妻と同じ程度」 仕事と両立45%「負担」

グラフ「絵本の読み聞かせは誰がする?」

 同実行委員会は二〇〇五年、「乳幼児の子育てにおける父親の意識に関する調査」と題し、ゼロ〜三歳児の父親を対象にアンケート。広島市内などから寄せられた二十〜五十歳代の七百人(うち74・6%が会社員)の回答をまとめた。

 子どもにご飯を食べさせる、おむつ交換など十六の場面ごとに「理想」と「現実」とに分け、父親の思いと育児参加ぶりを「すべて私」「ほとんど私」など五段階の回答から選んでもらった結果、絵本の読み聞かせは「ほとんど私」が理想と74・9%の父親が答えたのに、現実には妻並みにかかわっているのは23・8%どまり。70・6%の父親は絵本の読み聞かせを「ほとんど妻」「すべて妻」任せだった。ほかの十五の項目でも大体、同じ傾向がみられた。

 「頭では分かっていても、仕事で疲れ、体が動かない父親の気持ちはよく分かります」。回答者の一人、広島市南区の会社員小久保真さん(31)が長男大地君(3)をひざに抱き、結果を見る。

 小久保さん自身は、出勤前の十分間でも大地君に絵本を読み聞かせる。休みの日は一緒に遊び、幼稚園への送迎も積極的。妻の主婦智美さん(28)は「仕事で疲れているだろうに、おむつ替えや洗濯もこまめにやってくれた」と感謝する。

 智美さんは自宅出産を選んだ。へその緒は小久保さんが切った。以来、子育ては夫婦二人ですると自然に考えるようになった。「当時、私は整体業だったから時間の融通が利いた。今のような会社勤めだったら、きっかけを持てたかどうか…」

 妻と同等かそれ以上に育児を分担している夫の比率をみると、妻が専業主婦の場合、「寝かし付ける」「病院に連れていく」など十二項目で20%に届かなかった。逆に妻が働いている場合は「おむつ替え」で50%を占めたのを最高に十五項目で20%を上回った。「育児の手が足りない」必要に迫られ、参加するケースも多いとみられる。

 一方、「理想は?」というと、妻が仕事持ちかどうかで差はそれほどなく、全項目で「妻と同じ」か、それ以上にかかわりたいと答えている。小久保さんは「理想に近づくには父親の意識や努力が必要だけど、気兼ねせずに仕事を休め、育児の時間を保証される環境が欲しい」と語る。

 それを裏付けるように、子育てで何を負担に感じるかの問いには、「仕事との両立」が45・7%でトップ。自由記述欄には「残業も多く、妻任せになっている」「仕事の疲れもあり子どもの相手ができない」などの悩みを書いている。

 実行委の金子さん(45)は「父親が参加しないのはやる気がないせいだと思っていた。やりたくないのではなく、できなかったのだという声も多かった。結果をイベントなどで発表し、職場や社会の意識改革につなげたい」と話している。調査は広島文教女子大の吉田あけみ助教授(家族社会学)が監修した。

(2006.5.8)


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