増えるオープンスペース 広島 ■常設や三世代交流も 子連れで気軽に立ち寄って遊べ、おしゃべりを通じて育児の不安も和らぐ交流の場「オープンスペース」が広島市内で増えている。同市保健医療課がつかんでいるだけで約130カ所。公民館で住民が開く地域密着型、高齢者の集いとの併設型、自治体などによる常設型など、形態もいろいろで、目的に合わせて活用できそうだ。(森田裕美)
広島市安佐南区の祇園公民館ホール。「よくできたねえ」。室内用ジャングルジムに登った幼児を大人が拍手で励ます。積み木や人形で遊んだり、音楽を聴いたりしている親子もいる。 「自分が子育てしている時に、こんな場が欲しかった」。主婦岡本真由美さん(41)=安佐南区=は毎月第二月曜日の午前中、母親仲間など約十人でオープンスペース「おおきな木」を同公民館で開いている。 育児談議のできる「ママ友」を求めて、量販店の幼児服売り場で子連れの母親に話し掛け、連絡先を聞いたこともある。そんな経験から「子育て中の人の憩いの場になれば」と五年前から運営している。「のびのび遊べ、室内だから交通事故の心配もない。同世代の母親と話ができる貴重な場」と近くに住む、常連の主婦(34)は話す。 多様な運営主体 オープンスペースは十年ほど前から首都圏で目立ち始めた。運営の主体は、民間グループ、社会福祉協議会、自治体など多様。グループ数などを中国地方の五県ともつかみ切れていないが、鳥取県では「自治体の運営だけでも約五十カ所ある」という。広島市内では「ここ五年間で、数が四倍以上に増えている」(同課)。 二〇〇四年七月に発足した同市南区の「ほのぼの」は毎週水曜日の午前中、段原コミュニティ消防センターで開いている。地区社協が主催する高齢者の交流サロンといっしょになっていて、イベントも共催するなど親子、孫など三世代、四世代の交流もできる。 転勤族の主婦伊賀美香さん(35)=南区=は一歳と五歳の男児を連れて通う。「こうした場がないと知り合いもできないところだった。核家族なので子どもがお年寄りに慣れていいし、私も子育てのいろんな話が聞けて助かっている」 ただ、場所代や人材確保の問題から、多くは月一回前後開くだけにとどまっているのが現状。毎日のように通える場を求める声も根強い。 保育士らが常駐 そんな声に応え、広島市健康科学館(中区)は〇五年十月、館内にオープンスペース「つどいの広場」を常設。休館日(月曜と祝日の翌日)を除く毎日午前十時―午後三時まで自由に過ごせる。保育士など職員九人が育児相談にも応じる。 利用者は一日平均五十人を超える。週末は区外からのリピーターや父親も交じり、一日七十人以上に増える。ともに一歳の男児を育てている主婦山本美智さん(25)=中区=と主婦西河香さん(31)=同=は、地元の公民館で月一回あるオープンスペースと両方に通っている。「つどいの広場は、自宅で遊ばせるのがつまらなくなったときや雨降りの日など、思い立ったらすぐ来られる」と山本さん。 「いつも満員だからいいとは思っていない。利用メンバーが固定化すれば、新しい人が入りにくい」と同館の谷寿美江・教育課長。「より多くの人が安心できる場にしたい。利用者には、ここを終着点と考えず、地域に出て行くためのステップにしてほしい」と呼び掛けている。
(2006.4.3)
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