子どもが輝く協働に 【社説】 広島市教委と広島市内の七つの大学が、教育活動の支援協定を結んだ。教員志望の学生を、市立の小中高校や養護学校、幼稚園で受け入れ、授業などの補助をしてもらう。 「学び合う」のが教育の場だ。学校と学生の双方が刺激し合い、生き生きと教え、学べる環境のサポート態勢として軌道に乗せたい。 学校・園側が市教委を通じて原則五人の学生を募集し、面接で受け入れを決める。学生は授業や担任のサポート、放課後の勉強の手助けや学習相談などを受け持つ。担当の先生が学生の指導をする相互補完システムだ。 県立広島大、広島修道大など公私立七大学が協定した。早ければ五月から始める。 学校現場では今、低学年から学習内容を消化できないまま進級する子どもが増える深刻な実態がある。先生も多忙で、十分に向き合えない切実な悩みもある、という。公教育の一つの責任として、きめ細かく「学ぶ場」や「触れ合う場」を保障する必要がある。学習のつまずき解消や意欲を高めるために、学生の力を生かす意味は十分あろう。 先生を目指す学生にとっても、現場を深く知ると同時に、子どもの気持ちをじっくり酌み取れよう。教育実習は短期間の上、教科教育が中心だ。それだけに先生や子どもが何に喜び、悩んでいるかに接することで、人間としての成長も得られる。学生に意欲や夢を与える場にもなろう。 とりわけ今の若者は核家族で、きょうだいも少なく、人間関係を育てる環境が希薄だ。大事なコミュニケーション能力を培う機会でもある。 市教委では三年前から、小中学校で大学生が「放課後の学習指導」をする文部科学省の制度を導入。それが今回の市独自の仕組みに発展した。 放課後学習の一校、安東小の報告書では、児童は「自分を見てくれる先生がいることで意欲が出た」「世代が近い学生先生と話しやすかった」などの声が多かった。少子化や教員の高齢化で生じる世代間の気持ちのずれを解消することにもなる。学生は個々の子どもに応じて教える難しさと大切さを感じていた。 この学校・大学連携を確かなものにするには、単に学校側がボランティア学生が増えて楽になったと受け止めるのでなく、教育現場のどこに学生の力を生かせば子どもの教育ニーズを埋められるか―真剣に考えることだ。学校が目指す教育の在り方をしっかり議論することこそ重要だ。 こうした協力態勢は、大学の「地域貢献」の一つでもある。従来の産学官の連携は研究や技術開発が中心だったが、これからは分野を一層広げた協働が大切になろう。 将来を担う人材を育てる教育現場が少しでも活性化し、子どもたちが輝いてほしい。 (2006.3.19)
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